「肩が上がらない」が続くと、地味にストレスが積み重なります。
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棚の上の物を取ろうとして、腕が途中で止まる
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髪を結ぶ動きが、なぜか“引っかかる”
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服の袖に腕を通すだけで、肩の前がつまる
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痛みは強くないのに、力が入らない感じがする
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ストレッチしても、その場だけで戻る
こういうとき、つい「筋肉が硬いから」「筋力が落ちたから」と考えがちです。
でも実際は、脳が危険判断をして、肩の可動域と筋出力を制限しています。
今回は「肩が上がらない」「力が入らない」が起きやすい背景を、関節のセンサーと脳の調整という視点で、肩が止まる理由を「脳の危険判断の出力」として説明します。
読み終わるころには「なぜ戻るのか」「なぜ日によって違うのか」が、少し言葉で説明できるようになります。
もう少し深く知りたい方は下記も併せてお読みください。
関節運動反射とは?体が勝手に筋肉をコントロールする仕組み【基礎編】
関節運動反射の深層メカニズムと臨床応用【専門編】
肩が上がらないのは脳の危険判断で可動域が制限される
肩は、筋肉だけで動いているわけではありません。
肩の動きは、脳が 入力→解釈→出力 で決めています。
入力は、肩の関節・筋肉・皮ふから入る「位置・動き・圧・張り」の情報です。
解釈は、その情報を材料にして「安全」「危険」を決めることです。
出力は、可動域・力の出し方・痛みや違和感など、身体を守る反応として出す結果です。
だから肩が上がらないときは、脳が危険判断をして、肩の可動域と筋出力を制限しています。
脳の役目は「動かすこと」よりも壊さないこと。
入力がいつもと違ったり、情報が少なくて状況がはっきりしないと、脳は危険判断をしやすくなります。
危険判断になったとき、脳がやりたいのはシンプルで、関節や組織にかかる負担と、想定外の動きを減らすことです。
そのために、次の安全策が起こります。
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可動域を小さくする
動く範囲を狭くすると、関節の端まで行きにくくなります。
結果として、引っ張られ・ねじれ・つぶれなどの強いストレスが起きる確率が下がります。 -
出力を弱める(力を出しにくくする)
力を弱めると、関節にかかる圧や張力が下がります。
特に「持ち上げる」「支える」場面で負担が増えにくくなるので、脳にとっては安全です。 -
代わりの場所に仕事を渡す
肩そのものの出力を落とす代わりに、首・背中・反対側などに仕事を分散させます。
これは“痛い場所・不安な場所”を単独で酷使しないための安全策になり得ます。
つまり、肩が上がらないとは、脳が危険判断をした結果として「負担が増えにくい動かし方」に切り替えているのです。
「入力→解釈→出力」という全体像(当院の考え方)は、こちらで詳しくまとめています。
神経学トレーニングとは|脳神経学の視点で考える
肩の関節センサーが筋出力を変えるのが関節運動反射
肩の関節のまわりには、動きや圧の変化を拾うセンサーがあります。
センサーの役目はシンプルで、肩の情報を脳に伝えることです。
たとえば、脳は肩を上げるときに「この角度まで上げて大丈夫」「この方向なら引っかからない」といった判断を続けています。
その判断材料になるのが、関節まわりから入ってくるセンサー情報です。
このセンサーが拾っているのは、主に次のような情報です。
-
いま肩はどの位置にいるか
-
どっちに動き始めたか
-
どれくらいの負荷がかかったか
大事なのは、あなたが意識していなくても、情報はずっと脳に送られている点です。
つまり肩は「情報で動き方が調整されている」と考えられます。
この関節の情報が筋肉の出力に影響する仕組みを、関節運動反射と呼びます。
この全体像を押さえたい方は、こちらが入り口として分かりやすいです。
関節運動反射とは?体が勝手に筋肉をコントロールする仕組み【基礎編】
関節情報がはっきりしないと脳が危険判断して制限が出る
脳は「安全に動かせる」と判断すると肩をスムーズに動かします。
関節センサーの情報が不足し、位置・動き・負荷の材料がそろわないと、脳は危険判断をします。
たとえば、肩の「位置」「動き」「負荷」の情報が欠けたり、ばらついたりすると起きます。
-
筋肉を硬くして動きに制限をかける
-
力が入りにくい
-
痛み・違和感を出す
肩が上がらないのは、脳の危険判断による出力制限です。
脳が身体を守るために筋出力を下げる
力が入りにくいとき、多くの方は「筋肉が落ちたのかな」と考えます。
もちろん筋力要素がゼロではありません。
ただ、実際には「出せる筋肉はあるのに、筋力を下げている」ことが起きます。
脳が危険判断をすると、身体を守るために筋肉に出させる力を下げます。
これは、痛みや炎症を増やさないための安全装置です。
力を落とすことで、肩関節や周辺組織にかかる負荷とスピードを抑えられます。
だから、ぎの整体院では「とにかく鍛える」の前に、危険判断を解除しやすい条件を作ります。
条件とは、脳が安全判断できるだけの正確な入力をそろえることです。
運動療法は正確情報と安全情報を脳に入れ直す
脳が「肩を動かすのは危険」と判断して、肩の動きと筋出力に制限をかけています。
この状態で大事なのは、無理に伸ばすことでも、力で上げることでもありません。
脳が判断材料にできる「正確情報」と「安全情報」を届け直すことが運動療法の目的です。
正確情報とは、頭の中の動かしたいイメージと、実際の動きが一致している状態です。
たとえば肩を上げる動きでも、本人は「真横に上げているつもり」でも、実際は下記のズレが起きたりします。
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少し前から腕が上がっている
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腕を上げる瞬間に上半身が反対側へ倒れている
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肩より先に首や背中が動いてしまっている
運動療法では、このズレを修正して、イメージ通りの動きそのものを作り直します。
これが脳に入る「正確情報」です。
安全情報とは、動かしても痛みが出ないという結果そのものです。
運動療法では、痛みを我慢して動かしません。
痛みが出ないギリギリの範囲で動かします。
その範囲で動かせると、脳は「この動きは危険ではない」と判断します。
この判断材料が、脳に入る「安全情報」です。
運動療法は、筋肉を鍛えることが目的ではありません。
正確情報(イメージ通りに動かせた)と、安全情報(痛みが出ない)を繰り返し届けて、脳の危険判断を変えることが目的です。
その結果として、脳が出していた可動域制限や出力制限が弱まります。
神経ストレッチは感覚情報を正確に入力するのが目的
ぎの整体院の神経ストレッチは、筋肉を伸ばす目的ではありません。
狙いは、神経が伸ばされた感覚を「肩の狙った場所」で感じられる状態を作り、脳が安全判断に使える材料を増やすことです。
考え方は2つだけです。
1.身体をイメージ通りに動かしてストレッチのポジションを作ること
2.目的は、狙った肩の場所で「伸ばされた感覚」を感じること
もし伸ばされた感覚が別の場所に出るなら、そのポジションは狙いから外れています。
角度や位置を少し変えて、狙った肩の場所で感じられる形に微調整します。
イメージ通りのポジションを作るのは運動療法の考えと同じです。
そこに、イメージした場所に神経が伸ばされた感覚情報を正確に感じていきます。
この「微調整して、狙い通りの場所で感じる」を繰り返すほど、感覚の材料がはっきりして、脳が危険判断を解除しやすくなります。
神経ストレッチの位置づけは、こちらです。
神経ストレッチの目的 伸ばす以外の狙い
症状が戻るのはボディマップの更新不足
施術直後に肩が上がっても、数日で戻ることがあります。
これは「効いていない」ではありません。
その場で入力が変わり、脳の判断が変わり、出力が変わっただけです。
日常の使い方が同じなら、脳は元の危険判断に戻します。
だから定着には、身体イメージの更新が必要です。
当院では、頭の中の身体イメージを地図に例えてボディマップと呼び、更新の過程をボディマッピングと呼びます。
ボディマップが分かると、戻る理由が言語化できます。
脳が描く身体の地図 ボディマップ
ボディマッピングと予測の関係
まとめ 肩が上がらないのは関節センサーと脳の危険判断で決まる
肩が上がらない・力が入らないは、筋肉だけでは決まりません。
関節のセンサー情報を材料に、脳が危険判断をすると、可動域制限や出力低下が起きます。
関節運動反射は、関節の情報が変わると筋肉の出し方が変わる仕組みです。
ぎの整体院は、伸ばすためのストレッチではなく、正確な情報入力で安全判断を作ります。
定着には、ボディマップの更新が必要です。
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