スマホを見るとめまいが悪化する理由:脳が首を「鉄板」に変える視覚性抑制の正体

スマホ めまい

スマホを長時間見ていると、首が固まり目の奥が重くなったりめまいが出る。
スマホを置いて立ち上がる時や、立った後にめまいが出る。

このように、スマホを使うことでめまいが引き起こされる方は非常に多いです。
一般的には「眼精疲労」「首こり」が原因と説明されますが、それは表面的な現象に過ぎません。

今回は、さらに深く「脳神経学」の視点から、スマホがどのように身体の機能を狂わせ、めまいを誘発するのか。
そのメカニズムをイラストを使ってわかりやすく解説します。

また、スマホスタンドの使用が、脳の機能レベルでめまいを改善する理由についてもお伝えします。

今回の内容を正しく知ることで、あなたのめまいを解消する新しい視点が手に入るはずです。

1.一般的に言われる「スマホとめまい」の主な原因

スマホによるめまいの原因を調べると、主に以下の4つの原因が挙げられます。

  • 眼精疲労(目の過緊張)
    小さな文字やブルーライトを長時間凝視することでピント調整を行う筋肉が酷使され眼精疲労からめまいが起こる

  • ストレートネック(スマホ首)
    下を向く姿勢が続くことで頭支える首の筋肉が緊張し、自律神経の乱れや頭痛を伴うめまいが起こる

  • 画面スクロールによる映像酔い
    画面を素早く動かす視覚情報と、止まっている身体の感覚にズレが生じ乗り物酔いと同じメカニズムでめまいが起こる

  • 自律神経の乱れ
    強い光刺激や過剰な情報の入力により、交感神経が優位になり続け、休息と活動のバランスが崩れることでめまいが起こる

これらは、身体の表面上で起きている現象です。

次章からは、これらを引き起こす『脳による反射の抑制』や『頭部の固定指令』といった、脳の制御システムからスマホとめまいの関係を説明していきます。

2.脳神経学が明かす本質:スマホ画面を効率よく見るための「脳の設定」

歩いているときは、頭は上下左右に動いていますが、視界はブレていません。
これは前庭動眼反射(VOR)という自動調整機能が働いているからです。

脳はスマホの情報を正確に読み取るために、前庭動眼反射(VOR)をあえて一時停止させる設定を選びます。

スマホを見るとめまいが起こる理由はこの仕組みを理解することから始まります。

2-1.視覚を安定させる「手ぶれ補正」VORの仕組み

耳の奥(内耳)には、バランスを司る「前庭器官」というセンサーがあります。
前庭器官は、主に以下の2つの器官で構成されています。

  • 三半規管
    頭の「回転(振る・ひねる)」を感知

  • 耳石器
    頭の「傾き」や「直線的な動き(加速・減速)」を感知

通常、脳はこれらのセンサーが感知した「頭の動き」に合わせて、瞬時に眼球を逆方向に動かして視界を安定させています。
この頭と眼球の一連の動きを前庭動眼反射(VOR:Vestibulo-Ocular Reflex)と言います。

VORは脳が自動で行うカメラの「高性能な手ぶれ補正」です。
この機能があるおかげで頭が動いていても、見たい対象にピントを合わせ続けることができます。

VORの仕組みについて詳しく解説した記事はこちらです。
参考:前庭動眼反射VORの仕組み

三半規管がバランスを取る仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:三半規管がバランスを取る仕組み

2-2.小脳が下す決断:視覚性抑制による反射の強制停止

スマホを持って画面上の文字や動画を追いかけているとき、VORは「読み取りを邪魔する原因」になります。

スマホを見ている時、頭との距離を一定に保っていると思いますよね。
しかし、呼吸や心拍、微細な姿勢の揺れによって、実際には「頭とスマホはセット」で常にわずかに揺れています。

このとき、脳内では以下の矛盾が起こります。

  • 耳のセンサー(前庭感覚)
    頭の微細な揺れを感知し、「視界がブレないように目を動かせ!(VOR)」と反射の指令を出す

  • 実際の視界(目)
    スマホも頭と一緒に揺れているため、目と画面の位置関係は変わらない
    そのため目を動かす必要はない

ここで勝手にVORが作動すると…。
眼球は「止まっているはずの画面」から視線を外す方向に動き、文字が流れて読めなくなります。

そこで、働くのが脳の微調整を司る「小脳」です。
「今は文字を読み取ることを優先する。勝手に目を動かすな!」
と強制的なブレーキ(抑制指令)を出します。
これを「視覚性抑制」と呼びます。

小脳が反射による眼球の動きをキャンセルして、スマホの画面を安定して見続けることが可能になります。
しかし、脳は便利な機能を力ずくで停止させるという、非常にエネルギーを使う作業を強いられます。

小脳がどのように運動や感覚の微調整を行うかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:小脳と前庭機能でバランスを整える

3.視覚を安定させる代償:脳による「頸部ロック」の強制指令

スマホを見ているときに首がガチガチに固まるのは、一般的には下を向いた頭を筋肉が支えているからです。
これは物理的な理由ですが、神経学的にてはもっと重要な理由があります。

それが視覚を安定させるために、脳が首の筋肉を硬直させて頭部を固定する指令です。

3-1.脳が選ぶ「物理的な固定」という代償

脳(小脳)にとって、常に発生するVORを一つずつキャンセルし続ける作業は面倒でエネルギー効率が悪い。

そこで脳は、この面倒な作業を減らすために、代替案を考えます。
「そもそも、頭が1ミリも動かなければ、眼球を逆に動かす必要もない。これならVORを抑え込む苦労もない」

つまり脳は、首の筋肉を強力な固定装置として頭をロックすることで、VORが起こらない状態を強制的に作ります。
これが、頭を支えて起こる筋肉疲労よりも深い「首が勝手に固まる」脳神経学的な理由です。

この時に、集中的に負荷がかかるのが、後頭部と首の境目にある「後頭下筋群」です。
後頭下筋群は、非常に多くの神経が集中しており、目と連動して頭の位置を細かく調整する高精度なセンサーとして機能しています。

しかし、脳から「固定」の指令が出続けると、これらの筋肉は持続的に緊張を続け、やがて柔軟性を失い硬く固まってしまいます。
これが、スマホを使い終わった後も解消されない「頑固な首の硬さ」の正体です。

3-2.後頭下筋群の過緊張と「センサーの沈黙」

後頭下筋群は、他の筋肉とは比較にならないほどの密度で、頭の位置を感知するセンサー(筋紡錘)が詰まっています。

【1gあたりの筋紡錘(センサー)密度】

  • 大臀筋(お尻):約0.8〜1.4個

  • 僧帽筋(首・肩):約2.2個

  • 手の筋肉(指先):約16〜30個

  • 後頭下筋群(首の付け根):約100〜200個

繊細な動きをする指先と比べても数倍、お尻の筋肉と比べれば100倍以上の密度です。
この数値は、後頭下筋群が「力を出すこと」よりも、「頭の位置情報を脳へ精密に伝えること」に特化していることを示しています。

通常、脳は「耳(三半規管)」「目(視覚)」そしてこの「後頭下筋群」からの情報を統合して、自分の姿勢を把握しています。
しかし、スマホのために首をロックし続けて筋肉が硬くなると、この超高性能センサーが正しく働かなくなります。

この「首からの位置情報の消失」こそが、スマホを置いた後のめまいを招く決定的な要因となります。

後頭下筋群の緊張がめまいにどう関わるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:めまいがマッサージで改善しない理由

4.動き出した瞬間の「めまい」:脳の切り替えエラーと予測誤差

スマホ使用後のめまいは、脳内で「自分の状態」と「実際の動き」の統合に失敗することで起こります。

バランスを司る各センサーが機能を制限されたまま動き出すことで、脳の計算にズレが生じている状態です。

4-1.解除されない「頭部固定」の指令

脳は、長時間のスマホ使用により「首を固めて視界を安定化」という特定の戦略に最適化されています。

スマホを置いて動き出そうとしても、小脳による「視覚性抑制」や首を固めるための指令は、すぐには解除されません。
つまり、視覚性抑制は無意識下で継続され続けます。

脳の中では、首の「固定モード」の指令が解かれず、立ち上がる「移動モード」へのスムーズな切り替えが妨げられてしまうのです。

4-2.動き出した瞬間の「予測」と「現実」の激しいズレ

脳は身体を動かす際、あらかじめ「この動きで、こういう感覚が戻るはず」と予測を行っています。
しかし、後頭下筋群が固まると、センサー(筋紡錘)の機能も低下して、正確な位置情報が脳へ送られなくなります。

  • 大脳の指令:「さあ、立ち上がって歩き出そう」

  • 小脳の予測:「この動きなら、首や耳からこれくらいの情報が来るはず」

  • 現実の入力:立ち上がった際、耳の感度は下げられたまま、首からは「不正確な情報」しか届かない。

この、脳が立てた予測と、実際に入ってきた感覚情報の間に生じるズレを「予測誤差」と呼びます。

この頭の位置の現実と予測のズレが、スマホを置いて立ち上がろうとした瞬間、視界がふわふわと揺れたり、ぐるぐると回るようなめまいが起こる理由です。

脳が行う「予測」と実際の感覚のズレがなぜ症状につながるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:脳の予測符号化と予測姿勢制御

脳が身体の状態を把握する「ボディマップ」の仕組みについては、以下の記事をご覧ください。
参考:ボディマップとは何か

5.スマホスタンドが「スマホ由来のめまい」を軽減させる理由

スマホスタンドの使用は、下を向くことで生じる後頭下筋群の過緊張を防ぐ役割も重要です。

しかし、脳にかかる神経学的な負荷を抑える役割があります。

5-1.VORが本来の役割を果たせる

スマホを台に固定すると、スマホは静止して、頭の位置だけが少し揺れる状態です。
この状況が、VORが「本来想定しているシチュエーション」です。

  • 頭の動き:呼吸や姿勢維持でわずかに揺れる。

  • スマホ(対象物):空間に固定されて動かない。

  • VORの働き:頭が揺れた分だけ、自動的に眼球を逆方向に動かして視線を安定させる。

台に固定されている場合、VORが正常に作動することで、自動的に視線がスマホの画面上にロックされ続けます。
手持ちの時のように、脳がエネルギーを使って「反射を無理やり抑え込む(VORキャンセル)」必要がなくなるのです。

5-2.「矛盾」が消え、「協調」に変わる

手持ちの際に脳内で起きていた「前庭感覚と視覚の情報の矛盾」が解消され、脳の処理負荷は大幅に下がります。

  • 前庭感覚:「頭が揺れた!眼球を逆方向に向けろ!」

  • 視覚:「固定されたスマホを見るために、眼球をそっちに向けたい!」

このように、耳からの指令と目からの要求が完全に一致(協調)します。

「反射の力」と「見ようとする意志」が対立するのではなく、反射が意志を助けてくれる状態になるため、脳にかかるストレスが最小限に抑えられます。

5-3.視界の微細なブレの解消

VORは非常に高性能な「手ぶれ補正機能」です。

手持ちの場合は「揺れる頭」と「揺れる手」の二重の揺れを制御しきれず、微細な視界のズレ(網膜像のすべり)が生じやすいです。
それが、固定された対象物に対しては、VORが極めて高い精度で視線を安定させます。

これにより、文字の微細なブレがなくなり、視覚情報の処理もスムーズになります。
脳が「頭を固めて無理やり視界を守る」という強硬手段をとる必要がなくなり、後頭下筋群の柔軟性が保たれます。

その結果、スマホを置いた後の予測誤差によるめまいを未然に防ぐことにつながります。
スマホ由来のめまいは、首の筋肉を緩めるだけでなく、脳の『固定モード』を解除することが解消への鍵となります。

6.まとめ:脳の「設定」をリセットして、めまいのない毎日へ

スマホ由来のめまいは単なる「首の疲れ」だけではありません。
スマホの情報を効率よく読み取るために、脳が一時的にバランス機能を制限し、首を「固定モード」にしたことで生じる、脳神経学的なエラーです。

大切なのは、以下の3つのステップです。

  1. 物理的負荷の軽減
    スマホスタンドを活用し、脳が「頭部を固定せよ」という指令を出さなくて済む環境を整えること。

  2. センサーの再起動
    固まった後頭下筋群を緩め、脳へ送られる位置情報の正確さを取り戻すこと。

  3. モードの切り替え
    脳の「視覚性抑制」を解除し、耳・目・首の連携(協調)を正常化させること。

ぎの整体院では、整体によって後頭下筋群の緊張を丁寧に緩めるだけでなく、脳の機能レベルからバランス調整力を整えることで、めまいの根本的な改善を目指しています。

スマホは現代生活に欠かせないものですが、代償として脳に負担をかけている可能性があります。
首の緊張を解き、脳のモードを正しく切り替えることができれば、めまいが改善される可能性があります。
一人で悩まず、ぜひ当院へご相談ください。

関連記事 めまいや身体のバランスに関わる脳・神経の仕組みについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
前庭動眼反射VORの仕組み
三半規管がバランスを取る仕組み
小脳と前庭機能でバランスを整える
めまいがマッサージで改善しない理由
脳の予測符号化と予測姿勢制御
ボディマップとは何か
姿勢とバランスを整える前庭脊髄反射VSR

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