オスグッド病は、成長期の子どもに多い「膝のお皿の少し下が痛くなる」スポーツ障害です。
そのなかで親御さんが不安になるのが次のオスグッドと身長・成長の関係にまつわる誤解です。
-
「オスグッドは骨が伸びている痛みと聞いた」
-
「痛みがなくなる=骨の成長が止まる=身長も止まるのでは?」
このページでは、オスグッド病(正式名称:オスグッド・シュラッター病、以下オスグッドと書きます)について、次の点を出来るだけ分かりやすく整理していきます。
-
オスグッドと「成長軟骨」「骨端線」の本当の関係
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「骨が伸びている痛み」「良くなると成長が止まる」という考え方がなぜズレているのか
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成長痛とオスグッドの違い
オスグッドそのものよりも、「オスグッドが良くなると身長の伸びが止まるのでは?」
という不安をお持ちの親御さんに成長期の身長が伸びる仕組みを知ってもらう。
そして、少し落ち着いて成長期のからだと向き合えるようになることが今回の目的です。
1. オスグッド病で身長は止まるのか?
まずは、いちばん心配になりやすい「身長への影響」について整理します。
オスグッドは膝下の一部分に起こるスポーツ障害です。
オスグッド自体が身長の伸びを直接止めるものではないというのが現在の考え方です。
ただし、痛みを我慢し続けることで、からだ全体に間接的な影響が出る可能性はあります。
この章では、「オスグッドは成長期に起こりやすいが、それだけで身長が止まるわけではない」という全体像を押さえたうえで
「オスグッド=骨が伸びている痛み」
「痛みがなくなる=成長が止まる」
という誤解がどう広がったのかを考えていきます。
1-1. よくある不安と結論
最初にいちばん気になるポイントからお伝えします。
現時点の医学的な知見ではオスグッド病になったことが直接の原因で、身長の伸びそのものが止まるという報告は無し。
オスグッドは、膝下の「脛骨粗面(けいこつそめん)」という部分に負担が集中して起こるスポーツ障害です。
全身の成長や背の伸びそのものが止まる病気では無いというのが現在の考え方です。
ただし、オスグッドによる痛みを我慢し続けることで次の、「からだ全体への間接的な影響」はゼロではありません。
具体的には次のようなことが起こりやすくなります。
-
動きが偏って他の場所に負担がかかる
-
練習量が極端に変わってしまう
-
痛みのストレスで睡眠や食欲が乱れやすくなる
ですから、身長よりも「痛みを長引かせない」「膝を守りながらスポーツを続ける」という視点がとても大切になります。
1-2. なぜ身長が止まると心配されるのか
オスグッドで身長が止まるのでは?
と心配される背景には、次のような情報が混ざって広まっていることがあります。
-
成長期に起こる膝の痛みなので「成長痛」と同じだと思われている
-
「成長軟骨が傷む=成長が止まる」というイメージがある
-
ネット上で印象的な体験談だけが目立っている
オスグッドは、成長期だけに起こる膝下のスポーツ障害です。
「成長期」「成長軟骨」という言葉だけが一人歩きしています。
「成長=身長」「成長軟骨=背が伸びるところ」とイメージしやすいことが、必要以上の不安につながっていると感じます。
1-3. 誤解が広がった背景についての考え
ここからは、ぎの整体院としての「なぜ誤解が広がったのか」という考え方です。
一つの見方として読んでいただければと思います。
オスグッドの特徴である膝下の出っ張りは、身長が伸びる元になる成長軟骨が残っている子どもだけに起こります。
大人は、同じように膝下が引っ張られても、脛骨粗面が大きく出っ張ることはほとんどありません。
この事実だけを見ると、オスグッドは、成長軟骨が残っていて身長が伸びる子どもだけに起こる。
つまり、身長が伸びる時期が終わった大人には起こらないという説明になります。
ところが、ここから伝言ゲームのように、
-
「オスグッドは身長が伸びている子どもだけの症状」
↓
-
「オスグッドは身長が伸びている間は仕方ない」
↓
-
「オスグッドは身長が伸びている間は改善しない」
という形で、少しずつ意味が変わりながら広まっていったのではないかと考えています。
さらに、「オスグッド=骨が成長している痛み」というイメージが重なると、
痛みがある=骨が伸びている
痛みがなくなる=骨の成長が止まる
という形で、「オスグッドが良くなると身長の伸びも止まる」と誤解されてしまう流れが出来てしまいます。
2. 成長期の骨の仕組みとオスグッドの関係
ここからは、「成長軟骨」「骨端線」といったキーワードをきちんと整理しながら、オスグッドがどのような仕組みで起こるのかを見ていきます。
骨がどのように伸びていくのか?
どこがモロいのか?
なぜ膝下が出っ張るのか?
が分かると、「オスグッド=身長が止まる」と短絡的に結びつけなくて良いことが見えてきます。
2-1. 成長軟骨とは何か(成長痛とは別物)
まず押さえておきたいのは、オスグッドと「成長痛」と呼ばれるものは別物という点です。
「身長が伸びているから痛い」「成長のせいだから仕方ない」といった説明は、オスグッドには当てはまりません。
成長期の骨の端には、「成長軟骨(骨端線・骨端軟骨)」と呼ばれる部分があります。
成長軟骨は大人のようにカチッと固まった骨では無く、骨を作っている途中の材料が集まっている場所です。
成長軟骨には、次のような特徴があります。
-
骨全体が一気に伸びるのでは無く、骨の端の成長軟骨(骨端線)が少しずつ伸びて骨の長さが伸びる
-
カルシウムが十分にたまっておらず、大人の骨に比べて柔らかく、割れたり欠けたりしやすいモロい状態になっている
-
膝のお皿の少し下、脛骨粗面のすぐ下にも、この成長軟骨(骨端線)が存在する
イメージとしては、しっかり固まったコンクリートの柱の先端に、まだ固まりきっていない生乾きの部分が少しずつ継ぎ足されて、柱が長くなっていくようなものです。
この「生乾き」の部分が、成長軟骨や骨端線にあたります。
このように、成長軟骨は「骨が伸びるための大切な場所」である一方で、まだ完成しきれていないぶん、大人の骨よりも衝撃や引っ張りに弱い場所でもあります。
オスグッドでは、まさにこの「モロい成長軟骨」がある脛骨粗面周囲に、スポーツによる負担が集中しやすくなります。
成長が進み、成長軟骨(骨端線)が閉じて硬い骨に置き換わると、このモロさは徐々に減っていきます。
そのため、オスグッドは「成長軟骨が残っている時期にだけ起こるスポーツ障害」と言われています。
2-2. オスグッド病が起こるメカニズム
2-1でお伝えしたように、脛骨粗面(図では膝蓋粗面)の下には「まだ完成していないモロい成長軟骨(骨端線)」があります。
ここに、成長期ならではのスポーツの負担が重なることで、オスグッドが起こります。
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)は、膝蓋腱を通して脛骨粗面に付着しています。
サッカー・バスケットボール・バレーボール・野球・陸上など、走る・跳ぶ・急なストップや方向転換が多い競技です。
ダッシュ・ジャンプと着地・急な減速やターンといった動きのたびに、大腿四頭筋が強く収縮し、脛骨粗面を上方向にグッと引っ張ります。
成長軟骨は、もともと柔らかくモロい状態です。
そこに、練習量の増加・ポジション変更・大会前のハードなメニューなどで、同じ場所に繰り返し強い牽引ストレス(引っ張りの負担)がかかり下記の流れでオスグッドの痛みや膝下の出っ張りが現れます。
-
成長軟骨と骨との境目が少しずつ傷んでくる
-
脛骨粗面の一部が、引き出されるように突出してくる
-
その部分が炎症を起こして、押すと強く痛い・走ると痛いという症状になる
医学的には、こうした状態は「牽引性骨端炎(けんいんせいこったんえん)」と呼ばれます。
強く引っ張られることで、成長軟骨を含む骨の端が炎症を起こしている状態」と説明されます。
大人になると、成長軟骨(骨端線)は硬い骨に置き換わります。
だから、同じように引っ張られても簡単には剥がれないのです。
そのため、同じスポーツを続けていても、成長軟骨が残っている子どもの時期にだけオスグッドが起こりやすい、というわけです。
大切なのは、成長軟骨そのものが「身長を止めている」わけでは無い。
「モロい成長軟骨に、スポーツによる強い引っ張りが繰り返しかかる」ことでオスグッドが起こるという点です。
ここを理解しておくと、「身長が伸びる=痛くなる」「オスグッド=身長が止まる」という誤解から少し離れて、どう負担を減らしていくかに目を向けやすくなります。
2-3. 骨は伸びるのに筋肉が追いつかない?についての考え
オスグッドの原因として、よく言われる説明の一つに、
「骨の長さが一気に伸びたせいで、筋肉の長さが骨の長さに追いついていない」
というものがあります。
成長期に骨の伸びが急に加速する時期があり、その変化が筋肉や腱に負担をかけやすくする。
という意味では、これも要因の一つとして完全に間違いとは言えないと思います。
ただ、ぎの整体院では、一番大きな要因は、成長軟骨が残っている膝下に、スポーツによるオーバーユース(使い過ぎ)が重なっていることだと考えています。
その根拠の一つが、「施術で痛みがしっかり改善している」という事実です。
-
整体で、筋肉の絶対的な長さが急に伸びるわけでは無い
-
整体は縮んで硬くなった筋肉を本来の長さに近づけるだけ
本当に「骨の成長スピードに対して、筋肉の長さそのものが構造的に足りていない」ことが主な原因なのであれば、筋肉を本来の長さに戻しただけでは、理屈の上ではまだ長さが足りません。
なので整体をしても痛みは変わらないはずです。
ところが実際には、縮んでいた筋肉を緩めて脛骨粗面への牽引(引っ張り)の負担を減らすことで、オスグッドの痛みが改善し、プレーに戻れているケースを多く経験しています。
このことから、ぎの整体院では、次のように考えています。
-
「骨の長さが急に伸びる」ことは要因の一つにはなり得るだけ
-
主な原因は、成長軟骨が残っている膝下に、運動量や練習内容に対して負担が大き過ぎる状態が続いていること
3. オスグッドと「成長痛」の違い
ここまでで、成長軟骨とオスグッドの関係を見てきました。
次に、「成長痛」とオスグッドがごちゃ混ぜにされやすい理由と、その違いを整理します。
成長痛=背が伸びる証拠
オスグッド=その一種
と考えてしまうと、身長への不安がさらに強くなってしまうからです。
3-1. 成長痛は「身長が伸びるから痛い」では無い
昔から、「子どもの脚が夜に痛くなる=成長痛」と言われることがありました。
しかし現在の医学では、「骨が伸びるから痛い」という説明を裏付ける明確な根拠は見つかっていません。
成長痛と呼ばれてきた痛みは、次の特徴を持つ「下肢の原因不明の痛みの総称」として扱われています。
-
成長期の子どもに起こる
-
太もも・ふくらはぎ・膝まわりなど、脚の広い範囲が夕方〜夜に痛くなりやすい
-
朝になるとケロッとしていることが多い
-
検査をしても骨や関節に明らかな異常が見つからない
一方でオスグッドは、
-
痛む場所が「膝のお皿の下の一点(脛骨粗面)」に限られる
-
走る・跳ぶなど、膝に負担がかかる動きで痛みが強くなる
-
レントゲンなどで、膝下の骨の変化が見られることがある
といった特徴があり、成長痛とは別のものとして考えられています。
成長痛について詳しく知りたい方は、
オスグッドと成長痛の違い
もあわせてご覧下さい。
3-2. 研究から分かっている成長痛の特徴
成長痛については、世界中で数多くの研究が行われており、複数の研究をまとめて整理した論文でも、次のように整理されています。
-
骨の成長スピードと痛みの出方には、はっきりした関係が見つかっていない
-
成長痛がある子と無い子で、最終的な身長に大きな差は見られていない
-
成長そのものが痛みの原因というより、活動量・体質・心理的ストレスなど、いくつかの要因が重なっている可能性が高い
つまり、「成長=痛い」「成長痛=背が伸びる証拠」という考え方は、現在のところ科学的な根拠が乏しいとされています。
4. オスグッドが改善しても成長は止まらない
ここまで読んでいただくと、「オスグッドが改善したからといって身長の伸びそのものが止まるわけではない」という点については、理解していただけたと思います。
オスグッド病を改善出来るところは、残念ながら少ないのが現実です。
ぎの整体院では、オスグッドを「膝だけの問題」とは考えていません。
股関節・足首・体幹の使い方まで含めて全身をチェックし、膝下(脛骨粗面)に負担が集中しにくいからだの状態を目指していきます。
オスグッドについては、次の記事も参考にして下さい。
オスグッド(重症)のセルフケア
オスグッドと成長痛の違い
オスグッドはなぜ再発する?原因と予防の考え方
「オスグッドで身長が止まるのでは?」という不安を抱えたまま我慢するのでは無く、スポーツを楽しめる身体を一緒につくっていきましょう。
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