グロインペイン症候群を改善する閉鎖神経ストレッチ|股関節の「脳のブレーキ」を解き放つ方法

グロインペイン症候群

一歩踏み出した瞬間、鼠径部に走る痛み。
全力で加速したいのに、身体がついてこない。
休んで良くなっても、また動き始めると痛みが戻る。

グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)は、スポーツを楽しむ方を悩ませる股関節の症状です。
サッカー、ランニング、テニス、バスケットボール、ジムでのトレーニング、ジョギング。
様々なスポーツでグロインペイン症候群になる可能性があります。

ストレッチ等の一般的なセルフケアは、硬くなった筋肉に対するアプローチ方法ばかり。
しかし、ストレッチを頑張っても改善しなくて悩まれている方は多いです

筋肉の硬さは、脳からの防御反応による指令で起こっています。
一般的な方法で変わらないのは、筋肉よりも上位の脳の防御反応が修正されていないから。
重要なのは、股関節の状態を正しく脳に認識させて防御反応を解くことです。

他院や一般的な情報よりも一歩踏み込んだ脳・神経の視点からグロインペイン症候群を解説します。
どこへ行っても改善しなかった方にこそ、読んで試してほしい内容です。

股関節の防御反応を解除してグロインペイン症候群を改善する神経ストレッチも紹介します。

グロインペイン症候群は画像検査で異常が無くても痛みが続く理由

股関節 痛み場所

グロインペイン症候群は聞き慣れないですが名前を分解すると理解できます。
鼠径部(そけいぶ)の痛みを意味する「グロイン(groin)」と痛みのペイン(pain)」で鼠蹊部痛。
原因不明だけど同じ痛み等の症状が出る「症候群(syndrome)」を組み合わせた名称です。

グロインペイン症候群の痛みは、鼠径部を中心に以下の場所に出ることがあります。
鼠径部、太ももの内側(内転筋部)、下腹部、坐骨部、睾丸周辺など。

痛みの種類も、鋭い痛み、鈍い痛み、刺すような痛みなど様々です。
運動時に痛みが強くなることが多く、走る、蹴る、跳ぶ、捻るといった動作で痛みが出ます。

この動作が多いサッカー選手に多いとも言われています。
中田英寿選手、中村俊輔選手、長谷部誠選手、丸山桂里奈選手など、国内外の有名選手もグロインペイン症候群で苦労してきました。

画像検査では異常が見つからないことが多い

異常なし

グロインペイン症候群で悩む方の多くが、病院で画像検査を受けます。
しかし、レントゲンやMRIでは「特に異常はありません」と言われることが多いです。

骨や軟骨、腱に明らかな損傷はなし。
それでも痛みがあるのがグロインペイン症候群の特徴です。

グロインペイン症候群の原因として、一般的には以下が挙げられます。
筋力不足、柔軟性不足、過剰なトレーニング、身体の使い方の問題。
ただ、これらの説明だけでは「なぜ画像検査で異常が無いのに痛みが続くのか」を十分に説明できません。

ここからは、さらに深い原因として脳と神経の視点から考えてみます。

なぜ「脳のブレーキ」がかかるのか?痛みの正体と防御反応

入力 解釈 出力

グロインペイン症候群の痛みを理解するには、脳がどのように身体の情報を処理しているかを知る必要があります。

脳は、身体から入ってくる情報を受け取り、頭の中でまとめ、動きや感覚として表に出す。
という流れで働いています。

この流れは「入力 → 解釈 ・判断→ 出力」と呼ばれます。

脳が身体の情報を受け取る「入力」

悪循環

グロインペイン症候群の改善には、脳の身体の情報を処理方法を知る必要があります。

脳は、身体から入ってくる情報を受け取り(入力)、危険・安全を判断し(解釈・判断)、動きや痛みとして表に出す(出力)という流れで働いています。

股関節から届く情報が正常であれば、脳は安全と判断します。
しかし、炎症や痛み、筋肉の硬さがあると、悪い情報が脳に届きます。
脳は、この悪い情報をもとに危険と判断します。
すると、これ以上ダメージを負わせないために、脳は動きを制限する指令を出します。
これが「防御反応(ブレーキ)」です。

防御反応は、痛みを強めたり、筋肉を緊張させたり、筋力を低下させたりする形で現れます。
つまり、グロインペイン症候群の痛み・動きにくさは、脳が身体を守るためにかけているブレーキです。

さらに、脳が出力した痛みや筋肉の硬さが悪い情報として再び脳に入力されます。
すると、脳はさらに「危険だ」と判断して防御反応を強めます。

また、痛みや筋肉の硬さは股関節の感覚を鈍らせるので、感覚の入力が不正確になります。
その結果、「股関節の状態がよく分からない」という不確実な状態になります。
脳は、不確実な状態を危険として判断するため、防御反応をさらに強めます。

この悪循環が、グロインペイン症候群を慢性化させる理由です。
この仕組みをもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ボディマップと神経学整体で身体を整える理由
脳は未来の身体を予測して動く危険回避の仕組み

閉鎖神経とグロインペイン症候群との関係

グロインペイン症候群を改善するためには、股関節から脳へ正確な情報を届けることが重要です。

その情報を運ぶ神経の一つが「閉鎖神経」です。
閉鎖神経の役割とグロインペイン症候群との関係を詳しく説明します。

閉鎖神経の走行と役割

閉鎖神経

閉鎖神経は、腰の骨(腰椎)から出発し、骨盤の中を通って太ももの内側まで伸びている神経です。
具体的には、第2腰椎から第4腰椎の高さで脊髄から枝分かれします。
そこから骨盤の内側を通り、閉鎖孔(骨盤にある小さな穴)を抜けて太ももの内側へ向かいます。

閉鎖神経の役割は「運動神経」と「感覚神経」の2つです。
運動神経は、太ももの内側の筋肉に「動け」という指令を届けること。
感覚神経は、股関節や太ももの内側の状態を脳に報告すること。

この2つの役割により、閉鎖神経は股関節の動きと感覚の両方に深く関わっています。

閉鎖神経が支配する筋肉と個別の働き

閉鎖神経は、太ももの内側にある以下の筋肉に指令を出しています。
外閉鎖筋、長内転筋、短内転筋、小内転筋、大内転筋の一部、薄筋
これらの筋肉をまとめて「内転筋群」と呼びます。
また、恥骨筋は閉鎖神経と大腿神経の両方から指令を受けています。

外閉鎖筋は、股関節を外側に回す(外旋)働きを持っています。
長内転筋は、股関節を内側に閉じる(内転)働きと、股関節を曲げる(屈曲)働きを持っています。
短内転筋は、主に股関節を内側に閉じる(内転)働きを担っています。
小内転筋も、股関節を内側に閉じる(内転)働きを持っています。
大内転筋は、股関節を内側に閉じる(内転)働きと、股関節を伸ばす(伸展)働きを持っています。
薄筋は、股関節を内側に閉じる(内転)働きと、膝を曲げる働きを持っています。

これらの筋肉が協力して、股関節の複雑な動きを作り出しています。
この働きから、閉鎖神経に障害があると脚を組むのが難しくなります。

内転筋群の働きとグロインペイン症候群

内転筋群

内転筋群の主な働きは、脚を内側に閉じる動作(内転)です。

例えば、
ランニング時に片足で着地した瞬間、反対側の脚を内側に引き寄せる動き。
ボールを蹴るときに、軸足を安定させる動き。
こうした動作は、すべて内転筋群が担っています。

さらに、外閉鎖筋は股関節を外側に回す(外旋)働きも持っています。
方向転換で身体を捻るとき、この外旋の動きが必要です。

このように、閉鎖神経が支配する筋肉は、グロインペイン症候群で痛みが出る動作のほとんどに関わっています。

閉鎖神経の感覚領域とグロインペイン症候群

閉鎖神経

閉鎖神経は感覚を脳に伝える感覚神経の役割も持っています。
感覚を担当する領域は、太ももの内側の一部です。
この領域は、グロインペイン症候群で痛みが出やすい場所と重なります。

閉鎖神経は「股関節の状態を脳に報告する役割」があります。
股関節がどの角度にあるか。
どれくらいの力がかかっているか。
筋肉がどの程度伸びているか。
これらの情報は、閉鎖神経を通じて脳に届きます。

グロインペイン症候群では、この情報の流れが不正確になっている可能性があります。
痛みや炎症により、閉鎖神経からの情報が鈍くなる。
脳は股関節の状態を正しく把握できず防御反応が強まる

この悪循環を断ち切るためには、閉鎖神経を通じて正確な情報を脳に届けることが必要です。
それが、次に説明する閉鎖神経ストレッチの目的です。

閉鎖神経ストレッチがグロインペイン症候群を改善する理由

一般的なストレッチは、筋肉を伸ばして柔軟性を高めることを目的としています。
しかし、閉鎖神経ストレッチは目的が異なります。

筋肉を伸ばすのではなく、神経に正確な刺激を与えて脳に股関節の状態を正しく伝えることが目的です。

神経ストレッチを詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
神経ストレッチの目的と役割

神経ストレッチは神経の滑走性を改善

神経の滑走性

神経ストレッチは、末梢神経にテンション(張力)をかけて、神経の働きを正常化する方法です。

神経は、身体の動きに合わせて少し伸び縮みします。
この動きを「滑走性」と呼びます。
グロインペイン症候群が慢性化すると、閉鎖神経の滑走性が低下することがあります。
神経が周囲の組織と癒着したり、神経への血流が悪くなったりするからです。

神経ストレッチでは、神経にテンションをかける・抜くを繰り返します。
この動きにより、神経が動かされて滑走性が改善され、血流も良くなります。

ただし、これらは副次的な効果です。
神経ストレッチの最も重要な目的は、「脳へ正確な感覚情報を入力すること」
神経の滑走性が改善されることで、閉鎖神経から脳へ正確な情報が届きやすくなります。

運動神経と感覚神経が協力して股関節の情報を更新

神経ストレッチ

閉鎖神経ストレッチでは、運動神経感覚神経の両方を刺激します。

まず、正しくテンションをかけるポジションに身体をコントロールする運動神経の役目。
脳が「この角度で、この筋肉を使って」と指令を出し、身体を正確な位置に保ちます。
次に、テンションをかける・抜くを繰り返します。
毎回、同じ部位にテンションをかけることが重要です。
狙った部位にテンションを感じられない場合は、脚などを動かして微調整します。

そして、正確に狙った部位にテンションを感じるのは感覚神経の役目。
「今、股関節はこの角度にある」
「内転筋群はこの程度の張りを感じている」
こうした正確な情報が、閉鎖神経を通じて脳に入力されます。

脳は、この情報から股関節の状態を判断します。
この入力・解釈・出力の循環を繰り返すことで、脳は股関節の情報を正しく更新していきます。

股関節の状態が明確になり脳が安全と判断すると防御反応が弱まります。
筋肉の緊張が緩み、痛みが軽減する可能性があります。

この脳に安全判断する情報を入力することが閉鎖神経ストレッチの1番の目的です。

神経ストレッチの強度は3/10

神経ストレッチでは、強く伸ばす必要はありません。
最大10として、3程度の弱さで十分です。

なぜなら、目的は「筋肉を伸ばすこと」ではなく、「神経に正確な刺激を与えること」だから。
神経は非常に敏感です。
弱い刺激でも、脳にしっかりと情報が届きます。

強すぎると痛みが出ます。
痛みが出ると、脳が危険と判断して防御反応を強めてしまいます。
だから強くせず、3/10程度がベストなのです。

前後のチェックで効果を確認

閉鎖神経ストレッチを行う前に、必ず現在の状態を確認してください。

・どの動きが痛い
・どの角度から痛みが出る
・痛みがどこに出るか。
・動きやすさはどうか。

これを覚えておきます。

神経ストレッチを行った後、もう一度同じ動きをチェックします。
痛みが減ったか。
動きやすくなったか。

この変化を確認することで、あなたのグロインペイン症候群に閉鎖神経ストレッチが効果的かの判断ができます。
改善があれば続けて下さい。

改善がない、悪化しているなら中止して下さい。
グロインペイン症候群は多くの要因の積み重ねで症状が出ます。
改善がなければ閉鎖神経の要因は小さかったということです。

これは決して無駄ではありません。
要因の候補を一つ消せたという前進です。
他の要因を考えていけば必ず合う方法が見つかります。

グロインペイン症候群に効果的な閉鎖神経ストレッチ

写真は左右にスライドできます

閉鎖神経ストレッチ ポジション作り①

伸ばしたい側を後ろの壁にかける

閉鎖神経ストレッチ ポジション作り②

前に出した足を外に広げる
背筋を伸ばし骨盤後傾

閉鎖神経ストレッチ ポジション作り③

上体を前に倒す

閉鎖神経ストレッチ ポジション作り④

上体を伸ばす反対側に倒す

閉鎖神経ストレッチ ポジション作り⑤

上体を反対側に捻る

神経にストレッチ(テンション)をかけるために、特定の姿勢を作っていきます。
姿勢を真似するだけでなく、神経のストレッチ感を確認しながら行なっていきましょう。

テンションを感じるのは、後ろ脚の太ももの内側です。

閉鎖神経にテンションの出し入れ

グロインペイン症候群改善 閉鎖神経ストレッチ

骨盤後傾を保ったまま

・前後に動く
・上体を起こす・倒す
・上体の捻りを戻す・捻る

と動かして、閉鎖神経ストレッチでテンションを出し入れしていきます。
緩めた後にテンションをかける時に、閉鎖神経にストレッチ感があるか確認しながら行なっていきましょう。

グロインペイン症候群の施術

当院では、股関節だけに着目するのではなく、全身から要因を探します。

例えば、足首の動きが悪いと、股関節に過剰な負担がかかります。
胸椎(背中の骨)の動きが硬いと、股関節で補おうとして負担が増えます。
こうした小さな負担が全身に散らばり、積み重なってグロインペイン症候群となります。

だからこそ、全身を整える必要があります。
痛みのないソフトな整体で身体を整えて、必要に応じて神経ストレッチを含む神経学トレーニングの指導を行います。

整体とセルフケアの両輪で、グロインペイン症候群を改善していきます。
当院では、脳・神経の視点から股関節の状態を評価し、あなたに合った方法を一緒に探していきます。
強い麻痺、進行するしびれ、発熱、排尿・排便の異常がある場合は医療機関を優先してください。

下記も読まれるとより理解が深まります。

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