・めまいの時、決まって胸が苦しくなり呼吸が浅くなる
・深呼吸したいのに息が吸い込めず、地に足がつかない不安感に襲われる
・病院では異常なしだが、首の付け根はガチガチで意識しても深い呼吸ができない
めまいと息苦しさがセットであなたを苦しめるのは、明確な脳神経学的な理由があります。
脳にとって、「頭を支える首」と「体幹を支える横隔膜」は、バラバラに動く独立したパーツではありません。
重心を安定させ、転倒の危険から守るために一つの安定装置(チーム)としてセットで働く性質を持っています。
めまいと息苦しさが同時に起きるのは、脳が身体が不安定と判断したからです。
安全を守るために首と横隔膜を一括でガチッと固める防御反応を出します。
この記事では、脳がなぜ首と横隔膜を同時に固めてしまうのか?
なぜマッサージや呼吸法だけでめまいが改善しにくいかを詳しく解説します。
1.脳がバランスを保つ機能を最小限に抑えてしまう理由
身体は、本来「目(視覚)」「耳の奥にあるバランスセンサー(前庭器官)」「身体の感覚(深部感覚)」という3つのセンサーをチームとして使いバランスを保っています。
「視覚」は、ただ物を見るだけではありません。
周囲の空間と自分の位置関係を把握し、重心をコントロールするための極めて重要なセンサーです。
しかし、めまいを抱えている方の脳は、視覚へ過剰に依存し、前庭器官や身体の機能が省エネモードに切り替わる状態が起きています。
その理由は、脳が生き残るために優先している「エネルギーの節約」と「情報の整理」にあります。
1-1.脳が使うエネルギーの極端な偏り
脳が一度に処理できる情報の量(エネルギー予算)には限りがあります。
現代生活は、スマホやパソコンの画面をじっと見続けるなど、視覚処理のエネルギーが大量に必要です。
そのため、脳はエネルギーが不足しなように効率化を図ります。
それが、前庭器官や身体のセンサーの処理を最小限に抑えた節約モードです。
この情報処理枠の偏りによって、脳は視覚以外の情報をうまく活用できなくなります。
結果として正確なバランスを保てず、めまいが発生しやすい土台が出来上がります。
スマホの使用がめまいを悪化させる仕組みについては、下記で解説しています。
スマホを見るとめまいが悪化する理由(視覚性抑制と頸部ロック)
1-2.視界の安定を最優先して首を固める
脳がバランスを視覚情報に過剰に依存すると首を固めてしまいます。
視界が少しでもブレることは、揺れて転倒する等の危険性が高まります。
そのため、脳は視界の精度を維持するために、頭をガッチリと固定して、視界のブレを防ぐ安定命令を出します。
これが、マッサージをしてもすぐに戻ってしまう首のガチガチな硬直の正体です。
脳が安全を守るために、情報処理の枠を「視界の死守」に使い、首を固めるという効率的な戦略をとっているのです。
2.後頭下筋群のセンサーの精度低下がめまいを悪化させる
首の筋肉は頭を動かしたり固定する役割だけではありません。
頭の位置を脳に送るセンサーの役割があります。
視覚優先にして首を固めると、首の頭の位置センサーの役割が果たせなくなります。
頭の位置センサーが機能しなくなることが、めまいをさらに長引かせる要因となります。
2-1.後頭下筋群:眼球運動と連動する首の筋肉
視覚を優先で固めるのが、後頭部と上部頚椎(第1・第2頚椎)を繋ぐ後頭下筋群です。
後頭下筋群は小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4つ首の小さな筋肉の総称です。
後頭下筋群は第二の眼筋とも呼ばれるほど眼球の動きと密接に連動しています。
そのため、後頭下筋群はめまいとも深い関係にあると言えます。
後頭下筋群は、眼球が動いた反動で視界が揺れないよう、カメラの「手振れ補正」のように瞬時に収縮して頭部を固定します。
この機能が低下すると、視界が安定せず、常に揺れや違和感を感じる原因になります。
眼球運動に合わせた緻密なコントロール
-
上下の視線移動(スマホのスクロールなど)
小後頭直筋・大後頭直筋が働き、頭の角度を安定させる
スマホの縦スクロールを凝視し続ける動作は、この筋肉を絶えず緊張させる -
左右の視線移動(PCモニターの確認など)
下頭斜筋が収縮し、首の回転(回旋)を制御する
横長の画面を追い続ける作業は、左右の筋肉に不均等な負荷をかけ続ける -
凝視・ピント合わせ(スマホの近距離視)
スマホ画面を内下方に見る際、寄り目(輻輳)の動きに合わせて頭がズレないよう、左右の後頭下筋群が同時に収縮して頭部を強力にロックする
2-2.首の固定により不鮮明になる位置情報
視界を守るために首が「固定」され、後頭下筋群が動かなくなると、脳には大きな問題が発生します。
筋肉の中には、筋肉の伸び縮みを正確に測る「筋紡錘(きんぼうすい)」というセンサーがあります。
特に後頭下筋群には他の筋肉よりも多くの筋紡錘が密集しています。
【1gあたりの筋紡錘(センサー)密度】
-
大臀筋(お尻):約0.8〜1.4個
-
僧帽筋(首・肩):約2.2個
-
手の筋肉(指先):約16〜30個
-
後頭下筋群(首の付け根):約100〜200個
この数値は、後頭下筋群が、「頭の位置情報を脳へ正確に伝えること」に特化している証です。
筋肉が固まって動かないと、筋紡錘センサーからの「頭の位置」情報も正確に送られなくなります。
脳の情報処理の枠が視覚に偏り、首からの情報が正確に届かなくなると、脳は頭の位置や身体の状態を正確に把握できなくなります。
これがめまいの大きな要因となります。
2-3.情報の不一致による警告としてのめまい
脳にとって、自分の位置(頭の角度)を正確に把握できないと、バランスが不安定になり転倒等のケガのリスクが増えます。
後頭下筋群からの頭の位置情報が正確に届かないと、脳内では次のプロセスが起きてめまいが起こります。
-
入力の停滞
首が固定され、後頭下筋群のセンサーからの情報が不正確になる -
予測の困難
脳が頭の位置を正確に把握でず転倒リスク等があり危険と判断する -
めまいの出力
リスク回避のため、めまいを発生させて行動を制限させる
つまり、めまいは身体が壊れている合図ではありません。
情報の不鮮明さに対して脳が不安定な動きをさせないために出す警告信号です。
3.首と横隔膜の繋がり|息苦しさを生む横隔神経のルート
めまいと息苦しさが併発する理由には、横隔膜に指令を出す横隔神経にあります。
首と横隔膜は離れていますが、横隔神経は首の頸椎から出ています。
3-1.横隔膜を動かす神経は第3〜第5頸椎から出る
呼吸を司る横隔膜をコントロールしているのは、横隔神経です。
横隔神経は、首の骨の「第3〜第5頸椎(C3〜C5)」から出発します。
後頭下筋群は、後頭骨〜第2頸椎の間の筋肉で少し上にあるので直接は関係していません。
しかし、後頭下筋群が固くなると、当然その下の横隔神経が出る部分の筋肉も影響を受けて固くなります。
そのため横隔神経が圧迫等の干渉を受けます。
その結果、横隔膜への正常な指令が滞り呼吸の質が低下します。
この首の固さによる横隔神経の圧迫だけでなく、姿勢維持のために横隔膜を使うこともめまいと息苦しさに関連してきます。
3-2.姿勢維持に横隔膜を固めて呼吸が浅くなる
横隔膜には呼吸だけでなく姿勢の安定(体幹の保持)の役割があります。
視覚依存により首を固め身体が不安定になっている状態では、脳は呼吸よりも姿勢の安定を優先させます。
-
頸椎周辺の緊張
視覚を優先するために首の筋肉がロックされ、C3〜C5周辺の緊張が高まる -
横隔神経の指令変化
横隔神経を通じて、横隔膜に「姿勢を安定させるために固定せよ」という信号が優先的に送られる -
横隔膜の可動域低下
姿勢を支えるために横隔膜が固くなり、スムーズな上下運動(呼吸)ができず息苦しさが生じる
このように、姿勢維持のために横隔膜を使うことがめまいと息苦しさが出る要因の一つです。
3-3.迷走神経・横隔膜と自律神経への影響
横隔膜が硬くなると、単に呼吸が浅くなるだけでなく、自律神経バランスを乱す大きな要因となります。
その鍵を握るのが、横隔膜に開いている食道裂孔という穴です。
この穴には食道とともに、副交感神経の代表格である迷走神経が通っています。
迷走神経は首から腹部の内臓、心臓、血管などを広く支配しており、リラックスするための重要な神経です。
横隔膜が姿勢維持のために硬く緊張すると、この通り道である食道裂孔において、迷走神経が物理的な干渉を受ける可能性があります。
迷走神経の働きが乱れると迷走神経反射のような状態が起きやすくなります。
これにより、動悸や過呼吸のような感覚、血の気が引くようなめまいといった自律神経症状が起こる可能性があります。
このように、横隔膜の硬さは呼吸だけでなく、迷走神経を介して自律神経の安定までも奪うめまいの要因となる可能性があります。
横隔膜の硬さが自律神経に与える影響については、下記で詳しく説明しています。
横隔膜の硬さと自律神経・首の関係
4.視覚・首・呼吸のシステムを再構築してめまいを改善する
めまいと息苦しさを根本から解決するためには、固まった筋肉をマッサージでほぐすだけではありません。
過剰になった視覚への依存を抑え、前庭器官や呼吸機能を正常に働く状態に戻す必要があります。
4-1.視覚の依存を解除し前庭器官を活性化させる
脳が視覚の情報だけでバランスを取ろうとする状態を解除する必要があります。
そのために、視覚以外のセンサーを刺激していきます。
例えば、前庭器官からの情報入力を強化することも重要です。
脳が視覚に頼りすぎると、前庭器官からの情報は無視されてしまいます。
前庭器官は「傾き」や「加速」を感知する大切なセンサーです。
ぎの整体院では、前庭器官のトレーニング指導も行っています。
前庭器官の刺激を正しく入れることで、脳は視覚以外の情報でも頭の位置を把握できるようになります。
脳が「視覚に頼らなくても安全だ」と判断すれば、首を固める必要がなくなります。
その結果、視界を死守するために反射的に固まっていた首の筋肉は、自然と緩みめまい改善につながります。
前庭器官がバランスを保つ仕組みについては、下記をお読み下さい。
三半規管がバランスを取る仕組み
4-2.運動療法で後頭下筋群のセンサー精度を取り戻す
柔軟性を失い、情報の伝達が滞っていた後頭下筋群の機能を回復させます。
ぎの整体院では、独自の運動療法を用いてこのセンサーを再起動させます。
当院の運動療法は、筋肉を鍛えるためのトレーニングではありません。
動かしても安全という情報を脳に届けるが目的です。
首を、痛みや違和感が出ないギリギリ手前の範囲でイメージ通りに丁寧に動かします。
丁寧な動きを繰り返すと、脳に正確な位置情報が積み重なっていきます。
脳内の情報が明確になれば、脳は頭の位置を正しく把握できるようになります。
その結果、身を守るための防御反応(めまいや硬直)は不要になります。
また、後頭下筋群が柔軟性を取り戻し、筋紡錘センサーの精度も回復します。
当院の運動療法がなぜ筋トレや体操と異なるのかは、下記で詳しくお伝えしています。
運動療法の目的と考え方
4-3.横隔膜を姿勢維持から呼吸の主役に復帰させる
ぎの整体院では、状態に合わせて首と横隔膜のトレーニングも組み合わせて行います。
横隔膜の機能回復も、首と同様に運動療法を用いて進めていきます。
横隔膜が上下にしっかりと動く本来の呼吸パターンを身体に再学習させていきます。
正しく横隔膜が動くようになれば、食道裂孔を通る迷走神経への干渉も軽減されます。
その結果、呼吸の苦しさを含む自律神経症状も安定へと向かいます。
横隔膜が本来の柔軟性を取り戻すことで、全身のリラックス状態を作りやすくなります。
まとめ|脳のシステムを整え、めまいと息苦しさから解放されるために
めまいと息苦しさが同時に起きる正体は、脳が安全を守るために発動させた防御反応です。
視覚への過度な依存が、首の精密センサーを固め、横隔膜までも姿勢維持の固定具に変えるのです。
病院の検査で異常がなければ、脳の制御エラーからめまいが起きています。
めまい改善には、視覚・前庭器官・身体感覚のチームバランスを再構築する必要があります。
ぎの整体院では、独自の運動療法を用いて脳に「安全な情報」を届け、眠っていたセンサーを再起動させます。
首と横隔膜が本来の役割を取り戻せば、めまいも息苦しさも自然と消えていきます。
どこに行っても改善しないと一人で悩まずに、ぜひ一度当院へご相談ください。
あなたの身体が本来持っている健やかなバランスを取り戻すお手伝いをいたします。
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