「腰を回すと痛い」
「腰が硬くなった」
とお悩みのあなたへ。
まず最初に、一つ知っておいてほしい事実があります。
実は医学的に「腰の骨(腰椎)はほとんど回らない」構造なのです。
では、私たちが日常で「腰を回す」と感じている動きの正体は何なのでしょうか?
答えは「胸椎と股関節」。
あなたが腰を回していると思っている動きの約90%は胸椎と股関節が担っているのです。
「腰は回るが腰椎は回らない」という謎を理解すると、あなたの腰痛の原因が解明されます。
腰の構造を正しく理解することが、腰痛改善の第一歩です。
そして当院では、この「胸椎・股関節の動き」に、さらに脳と神経の働き(ボディマップ)を組み合わせて腰痛を考えています。
このページでは、「なぜ腰椎はあまり回らないのか?」という解剖学的な話に加えて、ぎの整体院が重視している脳と神経の視点も簡単にご紹介していきます。
腰椎が回旋しない解剖学的理由
腰椎は構造上、回旋(ひねる動き)が非常に苦手です。
その主な原因は「椎間関節の形状」にあります。
椎間関節とは?
椎間関節は、背骨(脊椎)の間にある小さな関節です。
背骨は約30個の骨(椎骨)が積み重なっており、椎間関節は椎骨後方の関節突起が形成しています。
具体的には:
- 椎骨の下関節突起と、下の椎骨の上関節突起で構成
- 背中の後ろ側に左右1組ずつ存在
- 椎骨1つにつき上下左右4つの関節面がある
椎間関節は、腰椎体を曲げたりひねったりする動きを可能にし、背骨全体の安定性を保つ重要な役割を果たしています。
日常生活では以下の動作で椎間関節が働きます:
- 背中を前に曲げる(前屈)
- 後ろに反らす(後屈)
- 横に曲げる(側屈)
- 身体を捻る(回旋)
椎間関節はドアの蝶番のようなイメージで、椎骨同士がスムーズに動くための役割を担っています。
腰椎の椎間関節は回旋が苦手な構造
腰椎の椎間関節は、関節面がほぼ垂直に近い角度で配置されています。
さらに下関節突起と上関節突起の関節面同士がピッタリとはまり込む構造になっています。
このため、回旋動作を行おうとすると上下の関節突起同士がぶつかる構造なのです。
腰椎の椎間関節がブロックすることが原因で、回旋動作は苦手なのです。
腰椎の回旋可動域は驚くほど狭い
- 腰椎は5個
- 全体の回旋可動域は5〜15度
- 最大15度で、多くの人はここまで回旋しない
このように腰を回した時でも、腰椎はほぼ動いていないのが実情です。
【重要】回旋は胸椎が得意
胸椎は背骨の中でも特に回旋に適した構造をしています。
その理由も椎間関節の「関節面の角度」にあります。
胸椎の椎間関節は、腰椎とは異なり斜めに傾いた関節面をしています。
この角度のおかげで、上下の椎骨がぶつかりません。
回旋動作がブロックされず滑らかに行える構造となっています。
- 1個だけでも腰椎より回旋角度が大きい
- 腰椎よりも7個も多い12個
- 数も多いため全体で約30〜40度の回旋が可能
この様に回旋角度・個数ともに胸椎が多いので回旋が得意です。
腰椎の5〜15度と比べると、その差は歴然です。
体幹の回旋における股関節の重要性
股関節も体幹の回旋動作で重要な役割を果たしています。
股関節は下半身と上半身(体幹)をつなぐ要です。
股関節の解剖学的な構造と、体幹を回旋動作に股関節がどう関わるのかわかりやすく説明していきます。
股関節の特殊な構造
股関節は、骨盤の側面にある受け皿状のくぼみ(寛骨臼)に大腿骨の丸い骨頭がはまり込む関節です。
- 丸い骨頭から「球関節(きゅうかんせつ)」と呼ばれる
- 球関節は肩関節と股関節の2つだけ
- 全身の中でも最大級に可動域の広い関節
読み方は同じでも、受け皿の寛骨臼から「臼関節(きゅうかんせつ)」とも言われます。
餅つきの時に使う杵と臼です。
臼の餅米を入れる部分の丸い窪みと似ているところから名前がついています。
臼の中で球が転がるように全方向に動くため、骨性だけの安定性は低いです
そのため、多くの筋肉・靭帯・関節唇等で骨頭を包み込んで安定性を保っています。
股関節と体幹の回旋メカニズム
体幹を回旋する時、股関節は骨盤と一緒に回旋方向に動きます。
例えば、足を地面につけたまま体を右方向にひねると:
- 右股関節では骨盤に対して大腿骨が相対的に内に回す(内旋)
- 左股関節では骨盤に対して大腿骨が相対的に外に回す(外旋)
これは、文章で読んでもイメージしづらいですが、実際にやってみると理解しやすいです。
股関節の内外旋の可動域は:
- 内旋は約40度
- 外旋は約45度
これも腰椎の5〜15度とは比較にならないほど大きな可動域です。
このように、腰を回す時は左右の股関節がそれぞれ内旋・外旋され、骨盤と上半身の回転を支えているのです。
大きな可動域の股関節が滑らかに動くことで骨盤がスムーズに回旋し、体幹全体で十分なねじり動作が可能となります。
胸椎・股関節が原因の腰痛
胸椎・股関節の動きが悪くて腰痛となるケースもあります。
- 胸椎と股関節の可動域が狭くなる
- 代わりに腰椎が過剰に回る必要が出てくる
- 腰椎やその周囲の組織に小さなストレスが蓄積
- 腰痛の原因となる
今まで説明した様に、腰を回す動きのほとんどは胸椎と股関節が働いています。
胸椎と股関節の可動域が狭くても回旋しなければならない。
そこで腰椎が余計に回る必要が出てきます。
その結果、腰椎やその周囲の組織に小さなストレスが蓄積していきます。
これが胸椎・股関節が原因の腰痛です。。
この場合は腰を施術するよりも、胸椎や股関節を施術しなければいけません。
この様に腰痛等の痛みの原因は、他にあることが多いです。
さらに、胸椎や股関節の動きが悪い状態が続くと、脳の中の「全身のイメージ図(ボディマップ)」にも影響が出てきます。
「このあたりがよく動かない」「ここはいつも硬い」という状態が続くと、脳はその部分を『動きにくい場所』『危ないかもしれない場所』 として学習してしまいます。
その結果、腰周りの筋肉を余計に緊張させて守るような反応が出やすくなります。
ボディマップについては、
脳と神経から考える慢性腰痛|ボディマップと中枢性感作の視点
ボディマッピングとは?
で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
腰痛改善のための胸椎と股関節の柔軟性
腰椎自体は構造上ひねれないため、体幹の回旋は主に胸椎と股関節の動きによって実現されています。
腰を回すと痛む、腰が回らないからといって、5〜15度の狭い可動域しかない腰椎をターゲットにするのは効率が悪いでしょう。
このような腰痛改善には、以下の広い可動域をターゲットにするのが効率的です:
- 約30〜40度の可動域がある胸椎
- 内旋40度・外旋45度前後の広い可動域を持つ股関節
腰を回しづらい時、胸椎・股関節は関係ないように思えるかもしれません。
でも今まで説明した様に、体幹をひねる動きの屋台骨となる重要な関節です。
胸椎・股関節が安定し適切に動くことで腰や体幹の動きが円滑になり、腰痛の予防にもつながります。
腰痛改善のための新しいアプローチ
腰痛に悩んでいる方は、「腰が痛い=腰そのものが悪い」と考えがちですが、ここまで見てきたように、胸椎と股関節の動きが大きく関わっています。
当院では、これに加えて下記の脳と神経の働きも考えて腰痛改善を目指します。
-
脳に入ってくる情報(入力)
-
脳の中にある身体のイメージ図(ボディマップ)
胸椎や股関節の動きが悪くなると、身体のねじり動作を腰椎が無理にかばう。
「このあたりは動きにくい」「ここは危ないかもしれない」という情報が脳に積み重なり、腰まわりの筋肉が余計に緊張しやすくなります。
こうした「からだの動き」と「脳の受け取り方」のズレについては、
脳と神経から考える慢性腰痛|ボディマップと中枢性感作の視点
で詳しく解説しています。
より深く知りたい方はあわせてご覧ください。
腰だけでなく脳・神経も考えた整体
ぎの整体院では、腰だけを施術するわけではありません。
胸椎・股関節・足首などの動きをチェックしつつ脳に届く感覚の入力とボディマップを整えていくという考え方で腰痛にアプローチしています。
そのために、
脳と神経から整える神経学トレーニング
運動療法(神経学トレーニングの一例)
などを組み合わせていきます。
これにより「胸椎と股関節がしっかり動く」+「脳が『この動きなら安全だ』と感じられる」状態を少しずつ増やしていくことを目指します。
腰痛だから腰だけを施術するのではなく、胸椎・股関節と脳神経の働きまで含めて整えていくことが、長期的な腰痛改善には大切だと考えています。
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