「首を揉みほぐせば、このめまいも楽になるはず」
そう信じてセルフケアやマッサージに通ったりしているのに、一向に改善しない。
それどころか、施術後にフラつきが強まる。
そんな経験をすると、
「この先、私のめまいは本当に改善するの?」
と、不安に襲われてしまいますよね。
施術結果を分ける決定的な理由は、単なる筋肉の硬さではなく脳の情報処理の仕組みにありました。
なぜ、首のマッサージで改善する人と、改善しない人に分かれるのか。
その理由を、首のセンサーである「筋紡錘(きんぼうすい)」と脳の関係から、脳神経学の視点で説明していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたのめまいがなぜ今まで改善しなかったのか、その正体と解決策が明確に見えてくるはずです。
※今回は、病院の検査で病的な異常が見つからず、「首の筋肉のコリ」が原因で起こるめまいに絞って解説しています。
1.めまい改善の鍵を握る主役「後頭下筋群の筋紡錘」
首のマッサージを受けて、めまいが改善される方もいます。
一般的には「筋肉が緩んで血流が改善し、酸素や栄養が運ばれたから」と説明されることが多いですよね。
それも間違いではありません。
しかし、マッサージを受けても改善されていない方も多いです。
その方は、さらに深くめまいのシステムを理解することで改善への道が見えてきます。
長引くめまいを根本から紐解く鍵。
それが、首の付け根にある後頭下筋群と、センサーの役割をする筋紡錘です。
後頭下筋群は、首の後ろにある4つの筋肉(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋)の総称です。
1-1.筋紡錘の役割:脳に3Dモデルを伝える情報センサー
筋肉の中には、「筋紡錘」というセンサーが備わっています。
筋紡錘は、筋肉の伸び縮みを感知し、以下の情報を常に脳へ送り続けています。
-
筋肉の長さ
筋肉が今、どれくらい伸びているか(位置情報) -
筋肉の伸びる速度
どれくらいの速さで動いているか(動きの情報)
脳は、これら筋紡錘からの情報を基に、自分自身の「3Dモデル(ボディマップ)」を脳内にリアルタイムで描き出しています。
この働きにより、目を閉じていても自分の身体がどのような姿勢なのかを把握できます。
これが「位置覚」と呼ばれる感覚です。
首の付け根にある「後頭下筋群」の筋紡錘からは、頭の位置情報が脳へと届けられます。
マッサージでめまいが改善するかは、この「頭の位置情報」が正しく脳に伝わるかがポイントです。
3Dモデル(ボディマップ)について、より詳しい説明は以下の記事で解説しています。
参考:ボディマップとは何か
1-2.後頭下筋群は「感覚入力」に特化した最重要拠点
首の筋肉は複数ありますが「めまい」に関しては、後頭下筋群が主役となります。
その理由は、後頭下筋群には、他の筋肉とは比較にならない密度に筋紡錘が詰まっているから。
1gあたりの筋紡錘密度
| 大臀筋(お尻) | 約0.8〜1.4個 |
| 僧帽筋(首・肩) | 約2.2個 |
| 手の内在筋(指先) | 約16〜30個 |
| 後頭下筋群(首の付け根) | 約100〜200個 |
(参考:Kulkarni V, et al:Quantitative study of muscle spindles in suboccipital muscles of human foetuses.Neurol India 49:355-359,2001)
繊細な感覚の指先の筋肉と比べても数倍、お尻の筋肉と比べれば100倍以上の密度です。
この数値は、後頭下筋群が「力強く動くこと」よりも、「頭の位置情報を脳へ精密に伝えること」に特化していることを示しています。
脳は、耳(三半規管)や目(視覚)の情報と、後頭下筋群からの頭の位置情報を統合して、「頭の正確な位置」を把握できるのです。
※注:上記研究は胎児標本に基づくデータであり、成人の密度については個人差を含め、さらなる研究が待たれる分野です。
1-3.【めまいの正体】後頭下筋群の過緊張で起こる理由
後頭下筋群の過緊張が続くと、精密なセンサーである筋紡錘が正しく機能しなくなります。
筋肉が固まりすぎると、筋紡錘は微細な位置の変化を感知できません。
固まった筋肉からは、脳へ「ずっと縮んでいる」という単調な情報が送り続けられるからです。
本来、頭が数ミリ傾いたときには、それに応じた微細な「長さ」や「速度」の情報が脳へ送られます。
しかし、筋肉のコリ情報が常に発生していると、本当に必要な微細な情報がその中に埋もれてしまいます。
その結果、脳に正しい情報は届かず、脳内のボディマップと現実の身体の動きにズレが生じます。
このデータの矛盾が、首のこりから起こるめまいの正体です。
2.マッサージで「めまい」が改善する人としない人の違い
ここから首のマッサージでめまいが改善する理由を説明していきます。
その理由は前章で説明した後頭下筋群の筋紡錘にあります。
2-1.情報の「埋没」を解消し、正確な情報を届ける
マッサージによって後頭下筋群が緩むと、筋肉の伸び縮みに余裕が生まれます。
この余裕ができることで、後頭下筋群の筋紡錘も再び働けるようになります。
これまでは単調な「筋肉が縮み続けている」情報が、脳を占領していました。
マッサージで後頭下筋群が緩むと、この単調な情報の連続を一度リセットできます。
単調な情報が止まると、脳は別の新しい情報を拾える状態になります。
ここでようやく、頭をわずかに動かした「精密な情報」が認識されます。
それまで遮られていた微細な頭の位置の変化が、表に出てくるようなイメージです。
こうして情報の埋没が解消されることで、脳は頭の正確な位置を把握できるようになります。
2-2.情報のズレの解消でめまい改善
脳は身体のバランスを保つために、常に3つの場所から情報を集めています。
1つ目は、目から入る「視覚の情報」です。
2つ目は、耳の奥にある三半規管などが感知する「加速や回転の情報」です。
3つ目は、首の後頭下筋群が感知する「頭の位置の情報」です。
マッサージによって首からの正確な情報が届き始めると、脳は情報の照合をスムーズに行えるようになります。
3つの情報源の整合性が取れることで、情報の「ズレ」が解消されます。
つまり、「現実の頭の位置」と「ボディマップの頭の位置」も一致します。
脳の混乱が解けることで、身体を守るために過剰に固めていた筋肉の強張りも緩んでいきます。
目・耳・首の情報が一致し、脳のパニックが収まることで、結果としてめまいが改善していくのです。
三半規管がどのようにバランスを取る仕組みについては、以下の記事で解説しています。
参考:三半規管がバランスを取る仕組み
3.なぜマッサージで「めまい」が改善しない・悪化するのか?その理由
マッサージを受けるほどめまいが強まったり、効果が長続きしなかったりする方がいます。
ここからは、なぜ刺激が逆効果になってしまうのかを解説します。
3-1.脳の「入力・解釈・出力」システム
脳は、常に「入力・解釈・出力」という3つのステップを繰り返しています。
これをめまいの仕組みに当てはめると、以下のようになります。
-
入力
目、耳、首(筋紡錘)から情報が脳に届く。 -
解釈・判断
届いた情報を統合し、今の状態が「安全」か「危険」かを判断する。 -
出力
その判断に基づき、今の安全を最優先するための指令を出す。
めまいが起きているとき、脳は現状を危険と判断しています。
目・耳・首の情報がバラバラで、脳が頭の位置を正しく把握できていないからです。
この状態で動くと、転倒や怪我につながる大きなリスクがあります。
そのため、脳は「めまい」という症状を出すことで、あなたに動きを控えさせようとします。
つまり、めまいは脳が安全を守るために出す強引なブレーキです。
脳が身体の情報をどう処理するか(入力・解釈・出力)について、より詳しい説明は以下の記事で解説しています。
参考:脳に入力される情報3分類
3-2.「一向に変わらない」のは、アプローチの優先順位が違うから
マッサージを続けても、めまいが一向に変わらないことがあります。
めまいに限らず、症状は多くの要因の積み重ねで起こります。
それらの要因には、影響の「大きなもの」と「小さなもの」があります。
首のマッサージで変化が出ないのは、あなたのめまいにおいて首の要因が小さいからです。
全体を100としたとき、首の占める割合がわずか数パーセントである可能性があります。
どれほど丁寧に小さな要因を整えても、他に大きな要因が残っていればめまい症状は変わりません。
例えば目や三半規管などに、脳がブレーキをかけ続けている「もっと大きな原因」が残っているからです。
3-3.マッサージが「処理不可能な過負荷」になる理由
マッサージ後に症状が悪化するのは、「小さい要因」へ「過剰な刺激」を与えたからです。
脳が情報の矛盾で混乱しているとき、脳は必死に情報を整理しようとしています。
そこに優先順位が低く、今は不要な「首の刺激情報」が大量に送り込まれます。
キャパオーバーになっている脳にとって、過剰な刺激はさらなる混乱の種です。
脳は「これ以上余計な刺激を入れるな、動くな」という指令をさらに強めます。
具体的には、めまいをさらに強く出力して、行動にブレーキをかけます。
さらに、首の筋肉をより固めて、頭の位置を固定させます。
これが、良かれと思ったマッサージが逆効果になり、めまいを強めてしまう理由です。
4.めまい改善を邪魔するスマホ生活
現代において、めまいの原因として後頭下筋群が占める要因は大きくなっています。
マッサージで改善しないめまいと後頭下筋群にはスマホ生活の影響もあります。
なぜスマホを使うことで、首のこりが強くなるのか。
その理由を、脳の仕組みから解説します
4-1.視線を固定するために脳が首を固定する
スマホの画面を見るとき、視線は画面内の狭い範囲で細かく動きます。
小さな画面内の情報を正確に読み取るには、視界がブレないことが重要です。
そのため、脳は頭の揺れを防ぐため、頭の土台である首を強く固める指令を出します。
つまり、後頭下筋群も固くなってしまいます。
脳には頭が動いても視覚を安定させる「自動補正機能」が備わっています。
これを前庭動眼反射(VOR)と言います。
しかし、スマホを凝視する際は、この機能がかえって邪魔になります。
そのため、脳によって前庭動眼反射(VOR)の働きが抑えられます。
その代償として、脳は首の筋肉をギュッと緊張させ、物理的に頭を固定させるのです。
つまり、後頭下筋群が前述したように固くなり目と首の情報のズレが出やすくなります。
このように、スマホを使うことで、めまいが起きやすい状態へと戻ってしまいます。
前庭動眼反射(VOR)の詳しい仕組みについては、以下の記事で解説しています。
参考:前庭動眼反射VORの仕組み
4-2.脳の「固定指令」がマッサージの効果を妨げる
脳が後頭下筋群を固めろと内側から指令を出し続けている限り、外側からのマッサージだけでは効果が長続きしません。
例えば、毎日数時間をスマホを見て過ごすとします。
その間、脳は「視界を守るために首を固めろ」という指令を出し続けています。
たとえ30分のマッサージで筋肉をほぐしても、数時間を「固定指令」の中で過ごせば脳の判断は書き換わりません。
毎日の習慣で「首を固めている時間」が長くなることで、めまいにおける首の要因が大きくなります。
めまい改善を妨げているのは、スマホ生活で日常化した、「脳による首の固定指令」なのです。
5.まとめ:脳のシステムを整えて「ブレーキ」を外す
めまいは、脳があなたの安全を守るために出す強引なブレーキです。
マッサージだけで改善しないのは、目や耳といった「首以外の要因」が残っているからです。
特にスマホ生活は、視界を安定させるために「首を固定する指令」を出し続けて、マッサージの効果を打ち消してしまいます。
ぎの整体院ではめまい改善に後頭下筋群を緩めるだけでなく、三半規管(耳)や視覚(目)などからも多角的にアプローチを行います。
筋肉だけを調整するのではなく、脳へ届く情報のズレを根本から整える。
その結果、脳が「安全」と判断し、「めまい」という症状のブレーキを外せる状態を作ります。
改善しないめまいでお悩みの方はご相談ください。
めまいと脳・神経の関係について、より深く理解したい方は以下の記事もご覧ください。
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