耳鼻科や脳外科の検査では「異常なし」。
「自律神経の問題」と言われたフワフワする浮動性めまい。
検査で異常なしなのは、問題が耳や首などの個別の「身体の部位」にはないから。
脳が情報を処理する「仕組み(やり方)」に問題があります。
はっきり言って、めまいの原因は多岐にわたります。
ただ、今回は「脳に届く情報の乱れ」という視点に絞って、脳神経学的な観点から詳しく説明していきます。
また、「マッサージで改善するめまい」と「マッサージでは解決できないめまい」の違いについても解説します。
なぜ首を揉むほどめまいが悪化することがあるのか?
なぜスーパーの棚を見ると、地面が揺れるように感じるのか?
など難しい内容ですが、わかりやすくイラストを使って説明するので安心して下さいね。
既存の説明では解決できない浮動性めまいの本質
一般的に言われるめまいの原因
浮動性めまいについて、一般的には次のように説明されることが多いです。
・首や肩の筋肉のこり
・三半規管の機能低下や内耳の問題
・自律神経の乱れ
・ストレスや疲労の蓄積
これらの説明は、確かに間違っているわけではありません。
しかし、これらの説明だけでは不十分です。
なぜ自分だけがこんなにフワフワするのか?
なぜ何をしても改善しないのか?
という疑問に、十分に答えられていません。
首を揉んでもめまいが改善されない理由
めまいが「一時的な首の強張り」だけが原因なら、マッサージで改善する場合もあります。
まずは筋肉がほぐれて頭への血流が良くなります。
血流以外にも、「頭の位置」を脳に伝えるための情報がスムーズに届くようになるからです。
しかし、揉んでも戻ってしまう場合は筋肉だけの問題ではありません。
情報を制御する「脳の情報処理システム」に問題があります。
めまいがあるとき、首からの情報は既に乱れています。
この状態で揉む刺激が加わると、脳にさらに大量の情報が送り込まれます。
脳が処理しきれなくなり、防御反応として首をさらに固めてしまうのです。
これが、マッサージの後に首のコリがひどくなったり、フワフワするめまいがかえって悪化したりする正体です。
さらに深くめまいを脳と神経から考える
ここからは、一般的に言われる原因に加えて、脳と神経の視点から浮動性めまいの仕組みを考えてみます。
めまいの根本原因は、脳が身体の位置情報を正確に把握できていないことにあります。
この情報の不鮮明さが、首の緊張、自律神経の乱れ、呼吸の浅さといった症状を連鎖的に引き起こしているのです。
首の付け根は脳が地面を把握するための高精度センサー
めまいを抱える方の多くに、首の付け根の硬さが見られます。
この部分には、後頭下筋群という小さな筋肉の集まりがあります。
後頭下筋群は、頭蓋骨と首の骨(頚椎)の間に位置する、4つの小さな筋肉の総称です。
大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋という筋肉が、頭と首をつなぐ部分に密集しています。
これらの筋肉は、頭を細かく動かすために働きます。
例えば、うなずく動き、首を傾ける動き、顔を左右に向ける動きなど、頭の微妙な位置調整を担当しています。
しかし、これらの筋肉は単に頭を動かすだけではありません。
脳が頭の位置を把握するためのセンサーとして働いています。
首の筋肉には他の筋肉の100倍のセンサー
全身のバランスは、足裏や目からの情報など全身の様々な情報を総合して保たれています。
この「全身の様々な情報」の中でも、特に重要な役割を果たしているのが筋肉からの情報です。
多くの方は、筋肉は身体を動かすためだけのものと考えているかもしれません。
しかし実際には、筋肉の中には位置や動きを感知するセンサー(筋紡錘)が埋め込まれています。
この筋紡錘の数は、筋肉によって大きく異なります。
例えば、筋肉1gあたりで筋紡錘の数を比較すると、
お尻の大臀筋:約0.8〜14個
肩の僧帽筋:約2.2個
後頭下筋群:約100〜200個
他の筋肉と比べて、数十倍から百倍近い密度です。
この筋紡錘が脳に送る情報が、脳が身体の位置を計算する重要な材料です。
特に、頭がまっすぐ立っているかを判断するために、脳は後頭下筋群から送られてくる情報を重視しています。
この首からの情報が不鮮明になると、脳は自分の位置が分からなくなり、フワフワするめまいが生まれるのです。
フワフワ感の正体は情報の不鮮明化
目を使いすぎたり姿勢が崩れたりすると、後頭下筋群は常に緊張した状態で固まってしまいます。
筋肉が固まりすぎると、筋紡錘は微細な位置の変化を感知できません。
固まった筋肉からは「ずっと縮んでいる」という単調な信号が送り続けられます。
頭が数ミリ傾いたときに出るはずの微細な信号が、この単調な信号に埋もれてしまいます。
その結果、脳に正しい情報が送られず頭の位置を正確に把握できなくなります。
脳は三半規管・目・首からの情報を常に照らし合わせて、頭の位置や傾きを確認しています。
この3つの情報が一致していれば問題ありませんが、首からの情報だけが不正確だと情報のズレが生じます。
脳は「今の状況が把握できない」と混乱します。
その混乱が、フワフワするめまいという感覚として現れるのです。
つまり、フワフワ感は首の筋肉が不正確な情報を脳に送り続けているために起こっているのです。
スマホ凝視がVOR(手ぶれ補正)を強制抑制し首をフリーズさせる
めまいを抱える方の多くは、スマホやパソコンを長時間見た後にフワフワ感が悪化します。
実は、スマホを見るという行為そのものが、首を固める原因になっています。
脳が視線を固定するために、あえて首をロックしているからです。
VOR(前庭動眼反射)という自動補正機能
脳には、頭が動いても視界を安定させる自動補正機能が備わっています。
これをVOR(前庭動眼反射)と呼びます。
反射とは、意識しなくても自動的に身体が反応する仕組みのことです。
VORの役割は、頭の動きと目の動きを連動させて、視界を安定させることです。
例えば、歩いているとき、頭は上下左右に揺れています。
しかし、視界は揺れません。
これは、頭が右に動いたとき、VORが自動的に目を左に動かして視界のブレを打ち消しているからです。
VORが働かなければ、歩くたびに視界がブレて、めまいのような状態になってしまいます。
正常にVORが働き視界を安定させることで普通に歩くことができます。
歩きながらスマホを見ても文字が読めるのも、このVORが働いているからです。
ところが、スマホの画面を凝視する際は、この便利なVORが逆に邪魔になります。
画面という一点を見続けるためには、目を動かさずに固定する必要があるからです。
そのため、脳はこの補正機能の働きをあえて抑制します。
前庭動眼反射の仕組みについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
参考:前庭動眼反射VORの仕組み
VOR抑制の代償として首が固定されめまいが悪化する
VOR(前庭動眼反射)の補正機能を止める代償として、脳は後頭下筋群をギュッと緊張させます。
スマホの画面を見続けるためには、頭を動かさずに目だけで画面を追うことが必要です。
そのために、脳は頭自体を物理的に動かないように固定するのです。
頭を動かさないという目的のために、首を石のように固めるという指令が出されています。
しかし、ここで問題が起こります。
本来なら、首の筋紡錘から「頭は動いていない」という正確な情報が脳に送られるはずです。
ところが、先ほど説明したように首が緊張しすぎていると筋紡錘は正確な情報を送れません。
つまり、首からは「頭の位置がよく分からない」という曖昧な情報が届きます。
一方、目からは「画面を止まって見ている」という明確な情報が入ってきます。
目からの明確な情報と首からの曖昧な情報が食い違うため、脳は混乱します。
この情報のミスマッチこそが、スマホを見た後にめまいが悪化する理由です。
スーパーの棚や人混みでめまいが激しくなる脳の情報処理限界
情報のズレが大きくなった時に経験するのが、スーパーの陳列棚や人混みでの激しいめまいです。
これは、情報量の多い場所で起こる現象です。
例えば、首の筋紡錘が「頭は右に3度傾いている」という情報を脳に送ります。
同時に、視覚からも「景色が右に3度傾いて見える」という情報が脳に送られます。
この2つの情報が一致することで、脳は「今、頭が右に3度傾いている」と正確に把握できます。
しかし、後頭下筋群が固まると、首からは曖昧な情報しか送られてきません。
視覚からは明確な情報が来るのに、首からは曖昧な情報が来る。
ここに情報のズレが生じます。
スーパーの棚のように情報量の多い場所では、視覚情報が非常に多くなります。
視覚からの大量の情報と、首からの曖昧な情報のズレがさらに拡大します。
脳はこの情報の大きなズレを処理しきれなくなります。
その結果、フワフワとした強いめまいや吐き気が生まれるのです。
姿勢と自律神経を同時に操る脳幹PMRF(網様体)の仕組み
めまいに動悸や不安感が伴う理由
めまいが、動悸や息苦しさ、不安感といった自律神経の乱れを伴うのはなぜでしょうか。
その鍵を握るのが、脳幹にあるPMRF(橋・延髄網様体)です。
脳幹とは、脳の一番下にあって、脳と脊髄をつなぐ部分のことです。
脳幹は中脳・橋・延髄の3つからなります。
ここには、呼吸や心拍など、生きるために必要な機能をコントロールする場所が集まっています。
脳幹には、網の目のように張り巡らされた神経の集まりがあり、これを網様体と呼びます。
つまり、PMRF(橋・延髄網様体)とは、橋と延髄にある網の目の様な神経の集まりのことです。
このPMRFは、生命維持に欠かせない無意識の司令塔です。
PMRFは姿勢の制御も担当しています。
意識しなくても倒れないよう、体幹や首の筋肉を自動で調整します。
また、PMRFは自律神経の調整も担当しています。
心拍、血圧、そして呼吸といった機能を一括管理しているのです。
無意識の姿勢とふらつきについて、より詳しい説明は以下の記事で解説しています。
参考:無意識の姿勢・ふらつきは網様体脊髄路
情報の矛盾をPMRFが危機と判断する
後頭下筋群の過緊張によって、首からの情報が不正確になります。
この不正確な情報が常に脳に送られ続けます。
PMRFは、姿勢を制御するために、三半規管、目、そして首から送られてくる情報を常に照合しています。
それが、首からの情報が不正確だと、PMRFに届く信号は矛盾したものになります。
PMRFはこの矛盾を危険な状態と判断します。
その結果、PMRFは全身に警戒の信号を発令します。
これが、交感神経の過剰な興奮による動悸、不安感、フワフワ感の増幅という症状で現れるのです。
姿勢の乱れと自律神経の乱れは、同じ部署が担当しています。
だからこそ、セットで起こるのが脳神経学的な仕組みなのです。
首と横隔膜が同時に固まる姿勢維持ユニットの連鎖
フワフワするめまいに悩む方の多くは、息苦しさや呼吸の浅さも同時に抱えています。
これは、脳が身体の安全を守るために、首だけでなく横隔膜まで一緒に固めてしまうことが原因です。
脳にとって、首の付け根は頭を支える重要な部分、横隔膜は体幹を支える重要な部分です。
これらは別々に動いているのではありません。
一つのユニットとして同時に働く性質を持っています。
目の疲れや情報の不正確さによって、首が不安定だと脳が判断します。
すると脳は、横隔膜も一緒に固めて身体全体を安定させようとします。
横隔膜が固まり、呼吸が浅くなります。
呼吸が浅い状態は、脳にとって危険情報となり警戒状態が強まります。
すると前述のようにPMRFは自律神経に警戒信号を送り続けます。
その結果、交感神経が過剰に興奮し、動悸、不安感、フワフワ感がさらに強まります。
こうして負のループが完成してしまいます。
揉んでも変わらない首の固さと、意識しても改善しない浅い呼吸。
これらは脳が安全のために一括でかけている防御反応の結果なのです。
めまい症状への当院の施術
当院では、ソフトな整体で身体を整え、「神経学トレーニング」で脳の「感覚のミスマッチ」を修正していきます。
目・耳・首から届く情報のズレを一致させ、フワフワするめまいを根本から改善していくためのアプローチです。
-
ソフト整体で「受け入れ態勢」を整える
低刺激な整体で全身の緊張を解き、身体をリラックスさせます。
脳がトレーニングの刺激を吸収しやすい状態になり、改善のスピードを早めるメリットがあります。 -
神経学トレーニングで脳を再教育する
自分自身で目を動かしたり、バランスを取る練習を通じて、脳に「正しい感覚」を覚え込ませます。
「視覚と首のセンサーが一致している」という状態を再認識できれば、脳はもう「めまい」という警告を出す必要がなくなります。 -
脳幹の警戒が解け、自律神経も安定する
情報のズレが解消されると、姿勢と自律神経を司る脳幹(PMRF)が「安全」と判断します。
その結果、防衛反応で固まっていた首のロックが解けるだけでなく、連動していた動悸や息苦しさといった自律神経の乱れも、自然と落ち着いていきます。
浮動性めまいに悩む方の改善症例
当院で、ふわふわするめまいで悩む方が改善された例を紹介します。
30代の女性
3年前から浮動性めまい
特にスマホを見た後に地面がフワフワして歩きにくくなる
病院の検査では異常なし
整体やマッサージに通ってもその場はスッキリするが、めまいは変わらない。
ソフト整体とセルフケアとして神経学トレーニング(三半規管)を続けてもらう。
徐々にフワフワ感が軽減。
週1回ペースで計8回でめまいが消失。
まとめ:脳の「感覚のミスマッチ」を整えれば、めまいは改善する
病院の検査で「異常なし」と言われたそのフワフワ感は、身体のどこかが壊れているのではありません。
「脳が情報の整理に混乱しているサイン」です。
大切なのは、筋肉を揉むことではなく、目・耳・首から届く情報のズレをなくすことです。
-
首のセンサーの働きを正常にし、脳が「正確な情報」を受け取れるようにする
-
脳が起こしている「感覚のミスマッチ」を解消し、情報の矛盾をなくす
-
脳が「安全」と判断すれば、防衛反応による首の固まりも自律神経の乱れも落ち着く
当院では、ソフトな整体で身体の土台を整え、独自のトレーニングで脳の学習を助けることで、めまいの根本的な改善を目指します。
「どこへ行っても変わらない」と諦める前に、ぜひ脳と神経の視点から身体を整えてみてください。
何科を受診しても原因がわからなかったそのめまい、当院が全力でサポートいたします。
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