重症なオスグッドで、どんなストレッチをして良いのか分からない。
そして。練習も出来ずに困っている子どもはたくさんいます。
特に、歩くだけでも痛みが出るレベルまで進むと日常生活そのものが大変になってきます。
インターネットや周りの情報には「オスグッドには太もも前(大腿四頭筋)のストレッチが大事」といった内容が多い。
でも、「やったけど改善しない」「ストレッチ自体が痛くて出来ない」と悩む親御さんからの相談も多いです。
今回は、重症レベルのオスグッドに対して、自宅で出来る「動かしストレッチ」を使った改善の考え方とやり方をお伝えします。
ここでお伝えする「重症」はあくまで動かしストレッチが合うかどうかを判断するための目安であり、医療機関での重症・軽症の診断とは別です。
オスグッドの原因やセルフチェック、全体的な改善の流れを知りたい方は、オスグッド病は成長痛じゃない|原因・セルフチェック・改善法を専門整体が解説も参考にしてみてください。
1. 重症オスグッドでストレッチに悩むときに知っておきたいこと
重症のオスグッドでは、「ストレッチ自体が悪いのか、それともやり方が合っていないだけなのか」が分かりにくくなります。
痛みがある状態で、今までどおりのストレッチを続けて良いのか?
それとも一度見直した方が良いのか?多くの親御さんが迷われます。
実際には、次のような声を聞くことがよくあります。
-
部活や整形外科、他の整体で「太もも前(大腿四頭筋)のストレッチをしておきなさい」と言われ、真面目に続けているのに膝下の痛みがあまり変わらない
-
指導されたストレッチを続けているうちに、むしろオスグッドの痛みが強くなってきた気がする
-
「多少痛くても我慢して伸ばした方が早く治る」と言われたが、本当にそれで良いのか疑問に感じている
このページでお伝えするのは、「痛みを我慢して伸ばすストレッチ」では無く、「痛く無い範囲で動かすストレッチ」です。
そのうえで、今の状態が重症オスグッド向けのやり方から始めた方が良いのかを、次の章で確認していきます。
今の膝の痛みがオスグッドなのか、それとも成長痛なのかが気になる場合は、
オスグッドと成長痛の違い
で詳しく解説しています
2. 重症オスグッド向けかどうかの簡単チェック
ここでは、「自分の(お子さんの)膝は、重症向けの動かしストレッチから始めた方が良いかどうか」を簡単にチェックしていきます。
判断のポイントは、どのくらい膝を曲げたときにオスグッドの痛みが出るかという点です。
2-1. 立て膝で行うオスグッドのチェック
まず、痛い側の膝を立てて座ってみましょう。
床にひざまずいて、いわゆる「立膝」の姿勢になります。
次の順番でチェックしてみてください。
-
オスグッド側の膝を立てて座り、その姿勢で膝下(オスグッドの部分)に痛みが出るかどうかを確認する
-
この時点で痛みが出る場合は「重症向け」の動かしストレッチからスタート
-
痛みがあれば、足を少し前に出して膝の角度をゆるめてみる
-
角度を広げてもまだ痛い場合も、重症向けから始める目安になります
逆に、立膝で座ってもオスグッド部の痛みがほとんど無く、膝をある程度曲げても痛みが強く無い場合は、レベルを上げた下記動画の応用編からでも大丈夫です。
2-2. チェックのときに気を付けたいポイント
ここで大切なのは、「少し痛いけど我慢できるから大丈夫」ではありません。
「痛く無い範囲で行う」ことを基準にするという点です。
-
チェックの段階から、痛みを我慢して膝を曲げない
-
「違和感程度だから平気」と無理に深く曲げない
-
立膝自体がつらい場合は、無理をせず後述の「椅子を使った方法」から始める
「少し痛いくらいなら我慢してやる」という発想は、重症オスグッドをこじらせる原因になります。
痛く無い角度でストップすること自体が、すでに改善への第一歩だと考えていただければ大丈夫です。
3. 重症オスグッドのストレッチは「痛く無い範囲で動かす」が基本
重症のオスグッドでは、膝を少し動かすだけでも痛みが出る状態です。
このとき、身体は「膝を動かす=危険」「これ以上動かさないでほしい」というサインとして痛みを出している。
と考えることが出来ます。
その改善には、「膝を動かしても痛くない」という体験を、身体に何度も覚えさせていくことです。
そのために、痛みが出ない範囲で少しずつ動かしていく「動かしストレッチ」が重要になります。
3-1. 一般的な大腿四頭筋ストレッチが合わない理由
オスグッドの情報を調べると、必ずと言って良いほど出てくるのが「太もも前(大腿四頭筋)のストレッチ」です。
もちろん、痛みが無い時期の予防や、柔軟性アップが目的であれば効果的です。
ただし、歩くだけでも痛いような重症レベルのオスグッドに対しては、次のような理由でおすすめ出来ません。
-
かかとをお尻に近づけるような強いストレッチでは、オスグッドの部分(脛骨粗面)に強い引っ張りがかかる
-
「ストレッチだから多少痛いのは我慢」という意識になりやすく、痛みを我慢しながら続けてしまう
-
結果として、「膝を深く曲げる=痛い動き」として、身体にさらに深く記憶されてしまう
オスグッドは、太ももの前の筋肉が硬くなり、膝のお皿の下からオスグッド部分(脛骨粗面)までの「膝蓋腱」を通して、成長軟骨が強く引っ張られることで起こります。
すでに炎症が起こっている状態で、さらに強いストレッチで引っ張ると、痛みや炎症が長引く・一度良くなりかけた痛みがぶり返す・逆に悪化するリスクが高くなります。
そのため、「歩くだけでも痛い」「少し膝を曲げただけで痛い」といった重症オスグッドに対して、一般的な大腿四頭筋ストレッチを頑張る必要は無いと考えています。
3-2. 動かしストレッチが有効な理由
ここでお伝えしている「動かしストレッチ」は、筋肉をグイッと伸ばすことが目的ではありません。
膝を動かしたときに、脳や神経にどんな情報が送られるかを意識したやり方です。
オスグッドの痛みが強い時期が続くと、膝を少し動かしただけでも痛みが出るようになってきます。
この状態では、膝を曲げる・体重をかける・走る・ジャンプするといった動きに対して、脳が「これは危ない動きだ」「これ以上やらせないようにしよう」と判断しやすくなります。
その結果、本来ならもう少し動かせるはずの範囲でも、早い段階で痛みのブレーキがかかってしまうことがあります。
ここで大事になるのが、「安全に動かせる範囲の情報を、脳に送り直す」という考え方です。
動かしストレッチでは、痛く無い範囲だけを選んで膝を曲げ伸ばしを繰り返す。
膝まわりの筋肉や関節から、「このくらいなら大丈夫」という感覚の情報を何度も送り続ける。
これにより、脳に「この角度までは安全」「ここまでは痛みを出さなくて良い」という経験を積み重ねていきます。
その結果として、次のような変化が起こりやすくなります。
-
太もも前の筋肉や膝蓋腱の過度な緊張が少しずつ抜けてくる
-
「膝を曲げる=怖い動き」というイメージが弱まり、動かしやすくなる
-
膝を動かしたときに脳が過剰にブレーキをかけにくくなり、曲げられる範囲が広がっていく
逆に、痛みを我慢しながら強いストレッチを続けてしまうと、「この動きはやっぱり危ない」「もっと強く止めないといけない」という情報を繰り返し教えていることになります。
その場合、痛みの出方が強くなったり、「少し曲げただけで怖い」という状態が長引いてしまうこともあります。
ぎの整体院としては、痛みを我慢して一気に伸ばすのはNG。
痛く無い範囲で少しずつ動かしながら、脳・神経に“安全な動き”を学び直してもらう
という考え方で、重症オスグッドのセルフケアとして動かしストレッチをおすすめしています。
4. 立膝で行う重症オスグッドの動かしストレッチ
ここからは、実際の動かしストレッチのやり方を具体的に説明していきます。
まずは、床に立膝で座れるお子さん向けの方法です。
立膝そのものがつらい場合は、無理をせず「5. 椅子を使った重症オスグッドの動かしストレッチ」から始めて下さい。
立膝でのストレッチでも大切なのは、膝を大きく曲げ伸ばしすることではありません。
「体重を乗せても痛く無い」範囲を少しずつ広げていくことです。
4-1. 手の当て方(膝蓋腱を挟んで前に押し出す)
まず、立膝の姿勢を作るのでオスグッド側を立てます。
その状態で、ゆっくり上半身を前に倒しながら、膝に体重を乗せていきます。
どのあたりでオスグッド部分(膝のお皿の少し下)が痛くなりそうかを、一度確認しておきましょう。
次に、両手を使って膝のお皿とオスグッド部分の間を左右からしっかり挟みます。
ここは太もも前の筋肉の最終部分で、「膝蓋腱」と呼ばれる場所です。
-
親指は膝のお皿の下側あたり
-
残りの指はオスグッドで痛むあたり
膝蓋腱を包み込むようにして、皮膚を前に絞り出すイメージでグッと前方へ押し出します。
このとき、挟む力が弱いとあまり変化を感じにくいことがあります。
「少しきついかな」と感じるくらい、思い切ってしっかり挟んでみて下さい。
4-2. 体重を乗せて膝を前に出す基本のやり方
ここでは、立膝の姿勢で行う動かしストレッチの具体的な手順だけを整理します。
狙うラインや注意点は、次の「4-3」でまとめて説明します。
-
楽にオスグッド側の膝を立てられる位置からスタートする
-
膝のお皿とオスグッド部分の間を、両手で左右からしっかり挟む
-
皮膚を前に絞り出すようにして、膝蓋腱を前方へ押し出す
-
膝の角度は大きく変えずに、上半身をゆっくり前に倒していく
-
体重を乗せて膝を前に出していき、痛み・違和感が出る手前で止める
-
上半身を起こして体重を抜き、最初の立膝の姿勢に戻る
この「立膝の姿勢 → 体重を乗せて膝を前に出す → 立膝の姿勢に戻る」という一連の動きを、痛みが出ない範囲で10回程度繰り返します。
終わったあとに手を離して、同じ立膝の姿勢から軽く体重を乗せてみて下さい。
最初よりも膝下に体重を乗せやすくなっていれば、動かしストレッチが良い方向に効き始めています。
4-3. 効果を高めるためのねらうラインと注意点
動かしストレッチは、「どこまで体重を乗せるか」で効果が大きく変わります。
ここでは、どのラインをねらえば良いかとやってはいけないことを整理します。
まず、避けたいのは次の2つです。
-
痛みが出る位置まで体重を乗せてしまうこと
-
まったく負荷を感じない超安全範囲だけを、軽く動かして終わってしまうこと
痛みが出るところまで頑張ってしまうと、脳や神経に「この動きはやっぱり危険だ」という印象が強く残ります。
一方で、怖さや負荷をほとんど感じない範囲だけを動かしていても、「今まで苦手だった動きでも、ここまでは大丈夫だ」という学習が起こりにくくなります。
ねらいたいのは、実際の痛み・違和感は出ていないけど「この先まで行くと痛くなりそうだな」と、少し感じるところ。
動かしストレッチでは、この「痛みが出る一歩手前」まで体重を乗せて膝を前に出し、そこで止めて戻すことを繰り返します。
このギリギリ手前のラインを何度も経験させていきます。
「この角度、この体重の乗せ方なら大丈夫」という情報が脳に届き安全な範囲が少しずつ広がっていきます。
まとめると、次のように意識してみて下さい。
-
「全然大丈夫なところだけ」では弱すぎる
-
「痛いのを我慢するところ」までは行き過ぎ
-
「痛く無いギリギリ手前」をねらう
この考え方は、椅子を使った動かしストレッチ(5章以降)のときにも、そのまま共通のルールとして使っていただけます。
4-4. 膝を軽く回しながら体重を乗せていく応用編
立膝でのまっすぐな動きに慣れてきたら、次のステップ。
膝を軽く回しながら体重を乗せていく応用編に進んでいきます。
スポーツの場面では、膝は真っすぐ曲げ伸ばしするだけでなく、着地や方向転換のときにわずかなねじれや回旋を伴います。
その動きに対しても、「このくらいなら大丈夫」というパターンを増やしていくイメージです。
やり方の流れは次の通りです。
-
楽に立膝になれる位置でスタートする
-
痛い側の膝を床について立膝になり、上半身は軽く起こしておく
-
その姿勢で、膝を小さな円を描くようにゆっくり回し、「どの向きに膝を向けると痛みが出そうか」を確認する
-
膝のお皿とオスグッド部分の間を、両手で左右からしっかり挟み、前に絞り出すように押し出す
-
膝の角度は大きく変えずに、膝を軽く回しながら上半身を前に倒し、体重を乗せて膝を前に出していく
-
「この向き・この位置から先に行くと痛くなりそうだ」と感じる少し手前で必ず止める
-
上半身を起こして体重を抜き、最初の立膝の姿勢に戻る
これを、痛みが出ない範囲で10回程度を目安に繰り返します。
ここでも、ねらいたいラインは 「痛みが出るギリギリ手前」 です。
怖さや負荷を全く感じない向きだけで回していても、膝や脳は「苦手だった動きでも、このくらいなら大丈夫だ」という学習が起きにくくなります。
かといって、実際に痛みが出る位置まで頑張り過ぎると、「やっぱりこの方向の動きは危ない」という印象が強く残ってしまいます。
まっすぐ体重を乗せる 4-2・4-3 の動きである程度慣れてから、回す範囲は最初は小さく行っていきましょう。
5. 椅子を使った重症オスグッドの動かしストレッチ
立膝そのものがつらい場合は、先ほどの動かしストレッチは負担が強すぎます。
そのようなときは、椅子やベッドを使った方法から始めた方が安全です。
膝にかかる体重を細かく調整しやすいので、重症オスグッドの初期にはこちらを優先して下さい。
5-1. 椅子の上で行う基本の動かしストレッチ
まず、椅子・ベッド・台などの上に、オスグッドで痛い側の脚を乗せます。
膝を少し曲げた姿勢を作り、その姿勢で上半身を前に倒していったときに、どのあたりで痛みが出そうかを一度確認しておきます。
次の流れで行います。
-
椅子の上に痛い側の脚を乗せ、軽く膝を曲げた姿勢で止める
-
膝のお皿とオスグッド部分の間を、両手で左右からしっかり挟み、皮膚を前に絞り出すように押し出す
-
膝の角度は大きく変えずに、上半身をゆっくり前に倒し、体重を乗せて膝を前に出していく
-
「この先まで行くと痛みが出そうだ」と感じる少し手前で必ず止める
-
上半身を起こして体重を抜き、最初の姿勢に戻る
この一連の動きを、痛みが出ない範囲で10回程度を目安に繰り返します。
膝を深く曲げることが目的では無く、同じ膝の角度のまま「体重をどこまで乗せて膝を前に出せるか」を少しずつ広げていくイメージで行って下さい。
終わったあとに手を離し、同じ姿勢で再び体重を乗せてみましょう。
最初よりも膝下に体重を乗せやすくなっていれば、動かしストレッチが良い方向に働いているサインです。
5-2. 膝を軽く回しながら行う応用編
椅子を使った応用編も、基本的な考え方は「4-4. 膝を軽く回しながら体重を乗せていく応用編」と同じです。
ただし、床の立膝よりも膝への負担を細かく調整しやすいので、より軽い負荷から回す動きを試したい場合のステップとして使って下さい。
やり方の流れは次の通りです。
-
椅子の上に痛い側の脚を乗せ、軽く膝を曲げた姿勢を作る。
-
その姿勢のまま、膝で小さな円を描くようにゆっくり回し、「どの向きに膝を向けると痛みが出そうか」を確認する。
-
膝のお皿とオスグッド部分の間を、両手で左右からしっかり挟み、前に絞り出すように押し出す。
-
膝を軽く回す向きを決めてから、上半身を前に倒し、体重を乗せて膝を前に出していく。
-
「この向き・この位置から先に行くと痛くなりそうだ」と感じる少し手前で必ず止める。
-
上半身を起こして体重を抜き、最初の姿勢に戻る。
これも、痛みが出ない範囲で10回程度を目安に行います。
最初は「回す範囲も小さく」「体重も軽く」から始めて、問題が無ければ少しずつ範囲や体重を増やしていきましょう。
ここでもねらいたいのは、痛みが出る一歩手前のラインです。
全く負荷を感じない向きだけを動かしていると、身体にとっては「安全だけれど意味が薄い運動」になりがちです。
反対に、痛みが出る位置まで頑張ってしまうと、「この方向の動きは危険だ」という記憶が強く残ってしまいます。
「この向き、このくらい体重を乗せても痛く無い」という範囲を一つずつ確認しながら椅子を使った応用編を活用してみて下さい。
6. 重症オスグッドでも改善を目指すためのポイントまとめ
重症オスグッドだからといって、何もしてはいけないわけではありません。
大切なのは、「何をどこまでやるか」を間違えないことです。
最後に、重症オスグッドの動かしストレッチで押さえておきたいポイントを整理します。
意識しておきたいポイントは次の通りです。
-
痛みが強い時期に、一般的な大腿四頭筋ストレッチで膝を深く曲げると、オスグッド部分を強く引っ張り過ぎて悪化させるおそれがある
-
動かしストレッチでは、膝の角度を大きく変えずに、体重を乗せて膝を前に出す動きを使いながら、安全な範囲を少しずつ広げていく
-
ねらうのは「痛みが出る一歩手前」で、実際の痛みが出るラインまで頑張り過ぎる必要は無い
-
反対に、全く負荷を感じない超安全範囲だけを動かしていても効果は乏しく、「少しだけチャレンジ感のある手前」まで体重を乗せることが大切
-
椅子・立膝・回す動きなど、そのときの状態に合わせて負荷を調整しながら、毎回「痛みが出ないギリギリ手前」を丁寧に探していく
写真や動画だけを見ると、「ここまでしっかり曲げなければいけないのか」と不安になるかもしれませんが、重症のオスグッドでは、そこまで曲げられなくて当然です。
今出来る範囲の中で、体重を乗せて膝を前に出せるゾーンを少しずつ広げていくことに意味があります。
「昨日より少し体重を乗せやすい」「怖さが少し減ってきた」といった小さな変化でも、積み重ねていくことで、歩きやすさやしゃがみやすさの改善につながっていきますよ。
オスグッドが良くなったあとに「また痛くならないか心配」という方は、
オスグッドはなぜ再発する?原因と予防の考え方
で、再発を減らすための考え方も確認しておくと安心です。
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