刺激情報を分けて考えると、身体の見え方が変わります。
肩こりや腰の違和感、痛み、歩き出しのこわさ。
病院で大きな異常がないと言われても、つらさが続くことがあります。
ぎの整体院では、こうした不調を「筋肉が硬いから」だけで片づけません。
ポイントは、身体に入ってくる刺激(入力)を、最初に3つの切り口で分けて考えることです。
1つ目は、入口の話です。
どんな受容器(センサー)から入っているのか。(外受容・内受容・固有受容など)
2つ目は、入ってくる情報の種類の話です。
視覚系・前庭系・体性感覚系のどれが材料になっているのか。
3つ目は、どこで処理されるか(場所)の話です。
脊髄・脳幹・小脳・皮質など、どこが関わっていそうか。
この3つをごちゃまぜにすると、「視覚が大事」「小脳が大事」「固有受容覚が大事」が同列に聞こえて、何をどう狙えばいいか分からなくなります。
今回は、当院の考え方を少し読んだことがある方向けに、この3つの分け方を使って「刺激情報」をスッと理解できる形にまとめます。
初めて読む方でも置いていかれないように、前提になる話は関連ページ(詳しい解説)も添えています。
読み終えるころには、当院がなぜ 視覚系(視覚情報)・前庭系(バランス情報)・体性感覚系(身体で感じる情報) をよく扱うのかも、理由ごとイメージしやすくなります。
1. まず押さえたい「入力→解釈→出力」
身体の不調を考えるとき、ぎの整体院ではまず
入力 → 解釈 → 出力の流れで捉えます。
入力は、身体の中に入ってくる刺激や情報です。
たとえば、目で見たもの、バランスの情報、触れた感じ、関節の位置の情報などが入ってきます。
解釈は、入ってきた情報を脳が組み合わせて「今の身体はこういう状態だ」と意味づけすることです。
ここで脳が「今の状態」をうまく読み取れないと、安全のために「守りモード」が強くなりやすいです。
実際の身体の状態以上に「危ない」「守らないと」と判断しやすくなります。
出力は、その解釈の結果として身体に出てくる反応です。
姿勢や動きだけでなく、筋の緊張、痛み、違和感、動かしづらさも出力に入ります。
痛み等の不調は「壊れた場所の情報」だけで決まりません。
脳が身体を守るためにブレーキを強めた結果として、痛みなどの不調が強く出ることもあります。
※「全部気のせい」という意味ではありません。
この考え方の土台になる「ボディマップ(脳の中にある身体のイメージ図)」と「予測」の話は、詳しくはこちらで解説しています。
ボディマップ/ボディマッピング
予測とボディマップ
2. 分類しないと、なぜ混乱するのか
2-1. 脳と神経は「つながり」が膨大
脳の中には神経細胞(ニューロン)が非常に多くあり、1つ1つがたくさんの相手とつながっています。
数の見積もりには幅があり、ここは未確立(推定に幅がある)部分です。
一般向けには「神経細胞は数百億〜1000億前後」「つながり(シナプス)は数百兆以上」などと説明されます。
例えば、「神経細胞が1200億ぐらい」「1つが10〜80,000ぐらいの相手とつながる」とすると
1200億 × 80,000 = 9600兆
というとんでもない数になります。
ここで大事なのは正確な数よりも、つながりが多すぎてどこを見ればいいか分からなくなるという点です。
2-2. 分類は「どこを見て、どう試すか」を決めるため
つながりが膨大だと、手当たり次第に頑張っても、どこがポイントか分かりません。
だから刺激(入力)を分けて、まず「可能性が高そうな入口」をしぼります。
そして、検査で「ここが働きにくそうだな」という目星がついたら、そこに狙って刺激を入れます。
そのあとに反応(痛み・動かしづらさ等の症状)がどう変わるかを確かめます。
変化が出れば、その方向にヒントがあると分かります。
変化が出なければ、別の分類(別の入口)を見直します。
この「しぼる→試す→変化を見る」を繰り返すために、分類が必要になります。
3. まず混乱しやすいのは言葉の分類(切り口)
「視覚が大事」「前庭が大事」「体性感覚が大事」「小脳が大事」「固有受容覚が大事」。
こう聞くと、全部が同じ種類の話に見えて、頭の中がごちゃごちゃになりやすいです。
でも実は、これらは同じグループの言葉ではありません。
同じ刺激情報の話に見えても、言葉が指している『分類(切り口)』が違います。
たとえば、視覚情報は「入ってくる情報の種類」の話です。
小脳は「その情報を使って調整する場所(部位)」の話です。
固有受容覚は「入口のセンサー(受容器)の種類」の話です。
この違いを分けずに一緒に考えると、何をどう狙っているのか分からなくなります。
そこで次の章から、刺激情報が混ざらないように、次の3つの分け方を順番に説明します。
-
センサーの種類で分ける(入口で分ける)
-
情報の種類で分ける(材料で分ける)
-
部位ごとの機能で分ける(処理する場所で分ける)
4. 刺激情報の分け方①センサーの種類で分ける(入口)
これは「どんな受容器(センサー)から刺激情報が入ってきたか」で分ける方法です。
受容器は、身体の中や外の変化をキャッチして、情報を脳と神経へ届ける入り口だと思ってください。
受容覚は、その情報をもとに脳が「いま身体はこうなっている」と把握しているときの感覚です。
-
外受容(五感)
視覚・聴覚・皮膚など、外の世界の変化をキャッチする -
内受容(内臓)
心拍、呼吸、胃腸など、内側の状態をキャッチする -
固有受容(動作)
関節の位置、筋の張り、動きの情報をキャッチする
ここで大事なのは、固有受容覚は「入口(受容器)の種類」を指す言葉だという点です。
「固有受容覚に刺激を入れる」というのは、関節や筋肉からの『位置・動き・力の入り具合』の情報を、脳ができるだけ正確に受け取れるようにするという意味です。
不調が続くとき、ぎの整体院では「ボディマップ(脳の中にある身体のイメージ図)が不正確になっている」状態が関わると考えます。
ボディマップが不正確だと、脳は安全のためにブレーキを強め、痛みやこわばり、動かしづらさ(出力)が出やすくなります。
動き方や負荷、触れ方を工夫しながら、その部分の感覚に注意を向けてもらいます。
その結果、受容器からの情報をより正確に受け取りやすくなり、ボディマップが少しずつ修正されます。
ボディマップが正確になるほど、脳の「守りのブレーキ」が弱まり、症状が軽くなっていくことが期待できます。
5. 刺激情報の分け方②情報の種類で分ける(材料)
これは「脳が姿勢や動作を作るときに、材料として使う情報」で分ける方法です。
ぎの整体院が特によく使うのは、この分け方です。
-
視覚系(視覚情報)
景色、位置関係、動くもの -
前庭系(バランス情報)
頭の傾き、回転、重力方向 -
体性感覚系(身体で感じる情報)
触れ、接地感、関節の位置など
「情報の種類で分ける」考え方は、姿勢や動き(立つ・歩く・向きを変える)を作るときに、脳が何を材料にしているかを分かりやすくするためのものです。
脳は、ひとつの感覚だけで姿勢を決めているわけではありません。
視覚系・前庭系・体性感覚系の情報を組み合わせて「今の身体の位置や傾き」を判断します。
その判断をもとに、筋の緊張や動きを調整します。
このように、姿勢や動きが「複数の感覚情報をまとめて使う仕組み」であることは、運動制御の教科書でも基本として説明されています。
当院がこの3つをよく話す理由は、シンプルに言うと「立つ・歩く」ができるかどうかは、この3つの情報のチームプレーで決まりやすいからです。
たとえば、歩くとき脳はずっと次の確認をしています。
「いま身体はどこにいる?」(視覚)
「頭は傾いていない?回っていない?」(前庭)
「足裏はどこに接地している?関節はどの位置?」(体性感覚)
この3つのどれかがボヤけると、脳は安全のために動きを小さくしたり、身体を固めたりします。
その結果として、ふらつき、歩き出しのこわさ、力み、痛みなどが出やすくなります。
6. 刺激情報の分け方③部位ごとの機能で分ける(場所)
6-1. 部位ごとの機能で分けるとは(どこが何をしているか)
これは「どこが何をしているか」で分ける方法です。
同じ刺激でも、通り道や使われ方は場所によって変わります。
だから「どの場所が関わっていそうか」を考えるときに、この分け方が役立ちます。
-
受容器/末梢神経/脊髄/脳幹/小脳/視床/皮質/島
たとえば、ざっくり言うとこういう役割があります。
受容器は刺激をキャッチする入口です。
末梢神経はその情報の通り道です。
脊髄・脳幹は、反射や姿勢の土台に関わる場所です。
視床は情報を中継する場所として働きます。
皮質は意識的な理解や運動の計画に関わります。
島は内受容(内臓の状態など)を含む「身体の内側の感じ方」に関わるとされます。
小脳は、動きや姿勢の「ズレ(誤差)」を減らすように調整する役割で知られています。
大事なのは、小脳は情報の種類ではなく、処理する場所(部位)の言葉だという点です。
視覚情報は「入ってくる情報の種類」の話ですが、小脳は「入ってきた情報を使って調整する場所」の話です。
同じ刺激の話に見えても、言葉が指している分類(切り口)が違います。
6-2. 「小脳に刺激を多く入れる」とは何を意味するか
「小脳に刺激を多く入れる」
という言い方も、小脳そのものを直接たたくという意味ではありません。
小脳が材料として受け取っている情報が何かを考えて、その情報を小脳にたくさん入れるという意味です。
小脳は、姿勢や動きをうまく調整するために、いろいろな情報を受け取って処理しています。
だから「小脳に刺激を入れる」とは、言い換えると 小脳に入る情報量を増やす ことです。
その手段として、たとえば次のような情報を増やします。
-
前庭系(バランス情報)
-
視覚系(視覚情報)
-
体性感覚系(身体で感じる情報)
ここでもう一度ポイントです。
小脳=場所(部位)の話で、
視覚系・前庭系・体性感覚系=入れる情報の種類の話です。
この2つを同列に並べてしまうと、「場所の話」と「情報の話」が混ざって、何をどうしたいのか分かりにくくなります。
だからこの章では、部位で分ける言葉(小脳など)は「どこに情報を集めたいか」を表す言葉として考えます。
7. 「同じ動き」でもどの分類で見ているかが違う
ここは実際にやるときに混ざりやすいポイントです。
ぎの整体院では、施術や運動療法(トレーニング)で「刺激(情報)を入れる」と言います。
ただし実際には、1つの動作だけで、視覚系・前庭系・体性感覚系も、固有受容(動作)も、脳幹や小脳も、同時に関わります。
つまり、現実の身体は「単体」では動きません。
それでも「分類」を使うのは、同じ動作でもどこを狙っているのか(何を意識しているのか)をハッキリさせるためです。
7-1. 小脳をねらうために前庭系を使う
たとえば、次のような言い方があります。
「小脳を刺激したいから、前庭系のトレーニングをする」
これは、同じ種類の言葉を並べているわけではありません。
分類(切り口)の違う言葉がセットになっています。
-
小脳
部位ごとの機能で分けた言い方(どこに作用してほしいか) -
前庭系のトレーニング
前庭系(情報の種類)の入力を増やす手段
意味としてはこうです。
「狙いたいのは小脳(部位)」
「そのための材料として前庭系(バランス情報)を多く入れる」
この違いを知らずに読むと、
「小脳と前庭って同じ分類?どっちが原因?」
と頭の中が混ざりやすくなります。
7-2. 「どこへ送りたいか」は部位の言い方、「何を入れるか」は情報の言い方
刺激を分けて考えるときは、次の2つを分けると理解しやすくなります。
-
どこへ刺激情報を届けたいか
部位ごとの機能で分けた言い方(例:小脳、脳幹、皮質 など) -
どんな刺激情報を増やしたいか
情報の種類で分けた言い方(例:視覚系、前庭系、体性感覚系 など)
さらに「入口」を強調したいときは、センサーの種類の言い方も使います。
- どの入口からの情報をはっきり入れたいか:センサーの種類(例:固有受容、外受容、内受容)
ここでの「入口」は受容器のことです。
7-3. 同じ動作でも「3分類のどこを意識するか」が変わる
同じ動作でも、何に注目して行うかで狙いが変わります。
つまり、動きは同じでも「見ているポイント」が変わるイメージです。
-
情報の種類(視覚・前庭・体性感覚)を意識する
どの情報が足りない/強すぎるかを見る -
センサーの種類(固有受容など)を意識する
どの入口の感覚をはっきりさせたいかを見る -
部位ごとの機能(小脳など)を意識する
どの場所に情報を集めたいかを見る
注目するポイントが決まると、同じ動作でも「何を確かめて、どんな変化を追うか」がはじめからはっきりします。
8. 3本柱はボディマッピングにつながる
ここまでの内容は、ぎの整体院の考え方のベースになります。
入ってくる刺激(入力)を分けて考えることが、当院のアプローチ全体の出発点です。
不調は「痛い場所」だけで決まりません。
入ってくる刺激(入力)と、それをもとにした脳の反応(出力)で変わるからです。
当院が大事にしているのは、脳の中にあるボディマップ(身体のイメージ図)です。
このイメージ図がボヤけたり不正確になっていると、脳は安全のためにブレーキを強め、痛みやこわばり、動かしづらさが出やすくなります。
そこで行うのがボディマッピングです。
ボディマッピングは、動きや感覚の経験を通して、ボディマップを少しずつ正確にしていくプロセスです。
ぎの整体院の3本柱(ソフト整体・神経ストレッチ・運動療法)は、手段は違っても目的は同じです。
ボヤけたボディマップを、少しずつ正確にしていくことを共通の目的にしています。
「筋肉が硬いから伸ばす」だけで終わらせず、どんな刺激を入れて、脳が使う情報を増やすかから考えます。
この考え方をもう少し詳しく知りたい方は、下のページを読むとつながりが分かりやすくなります。
ボディマップ/ボディマッピング
予測とボディマップ
運動療法
神経ストレッチの目的
小脳・前庭の考え方
9. まとめ
-
刺激情報は「入口」「材料(情報の種類)」「処理場所」で分け方が違う
-
視覚情報は情報の種類、固有受容覚は入口、小脳は処理場所
-
分類を混ぜると訳が分からなくなるので、まず分けて考える
-
同じ動作でも、3分類のどこを意識するかで狙いが変わる
-
3本柱はボディマップを更新していくボディマッピングにつながる
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