痛みの根本原因を解明!感覚のエラーが引き起こす不調と自分で整える視点

  • 慢性的な肩こりが続いている

  • 姿勢が悪いと言われるが、どう直せばいいか分からない

  • 頭痛で検査を受けても「異常なし」と言われてしまう

このような悩みを抱え、「その場しのぎではなく、本当に根本原因から改善したい」と考える方は多いです。

マッサージ・整体・薬などで一時的に楽になっても、すぐに元に戻ってしまう。
その背景には、筋肉や骨だけでは説明できない 「感覚のエラー」 が隠れていることが多くあります。

そしてもう一つ、とても大事な前提があります。
本当の意味で身体を変えていけるのは「あなた自身」 ということです。

ここでは、下記を神経学的な視点から分かりやすくお伝えします。

  • 感覚のエラーとは何か

  • なぜそれが痛みや姿勢不良の「根本原因」になるのか

  • どうすれば自分でそのエラーを修正していけるのか

1. 感覚は大きく3つに分けられる

感覚 特殊感覚 表在感覚 深部感覚

まずは全体像として、「感覚」を整理しておきます。
私たちが感じている感覚は大きく分けて次の3グループに分類されます。

  1. 体性感覚
    皮膚・筋肉・関節など、主に身体の表面〜骨格まわりから来る感覚
    (触覚・圧覚・温度感覚・痛覚・深部感覚 など)

  2. 内臓感覚
    胃・腸・心臓など、体の内側の状態を伝える感覚
    (胃のムカムカ、ドキドキ、息苦しさ など)

  3. 特殊感覚
    専用の器官から入る感覚
    (視覚・聴覚・嗅覚・味覚・前庭感覚(バランス)など)

このうち、慢性の痛み・姿勢のくずれ・こり感と特に関わりが深いのが、「体性感覚」の中でも深部感覚です。

バランスを感じる前庭感覚(三半規管など)については、くわしくは
目を閉じてもフラフラしない秘密!三半規管がバランスをとる仕組みを徹底解説
も参考にしてみてください。

2. 痛みと深く関わる「体性感覚」と「深部感覚」

2-1. 体性感覚とは?

体性感覚は、「身体が、どこで・どう触れて・どう動いているか」を感じるための感覚です。

大きく2つに分かれます。

  • 表在感覚…皮膚からの情報(触覚・圧覚・温度・痛み など)

  • 深部感覚…筋肉・腱・関節・靱帯など、身体の深い部分からの情報

表在感覚は、熱いものに触れたときの「アチッ!」や、尖ったものに触れたときのチクッとした痛みなど、比較的気づきやすい感覚です。

一方で、今回テーマにする深部感覚は、ふだん意識に上がりにくいのに、動き・姿勢・慢性痛と強くつながる感覚です。

2-2. 深部感覚の3つの柱「位置覚・運動覚・筋感覚」

感覚  深部感覚 表在感覚 特殊感覚 痛覚 振動覚 運動覚 位置覚

深部感覚の中でも、痛み・姿勢・動きと特に関係が深いのが次の3つです。

  • 位置覚:各関節や身体のパーツが「どの位置にあるか」を感じる感覚

  • 運動覚:身体が「どちら向きに・どのくらいの速さで」動いているかを感じる感覚

  • 筋感覚:筋肉に「どれくらい力が入っているか」「どれくらい伸びているか」を感じる感覚

例えば、目を閉じていても、ひざの曲がり具合が分かるのは位置覚のおかげです。
目をつぶって腕を振っても、「今 前に振っている」と分かるのは運動覚が働いているから。
スクワット中に「太ももに力が入っている感じ」が分かるのは筋感覚のは働きです。

脳はこれらの情報をまとめて、「今、身体のどの部分・位置・動く方向・どれくらい力が入っているか」を常にチェックしています。

このチェックが上手く働くと身体の状態がはっきり分かり、脳は身体を「安全寄り」に評価しやすくなります。

反対に、このチェックが乱れると身体の状態よく分からなくなります。
すると、脳は身体を「不安・危険寄り」と判断しやすくなり、筋肉を硬くしたり、痛みを出して動きを制限したりすると考えられます。

なお、医学系の教科書では、深部感覚は「位置覚・運動覚・振動覚」と説明されることが多いです。
今回は、日常の痛み・姿勢・運動イメージに結びつけやすくするため、特に筋感覚を前面に出し、振動覚の説明は省いています(用語の分け方は専門書のあいだでも完全には統一されていません)。

3. 感覚のエラーが痛みや姿勢不良の根本原因になる理由

3-1. 脳は感覚情報から「身体のモデル」を作っている

エラー

脳の中には、「自分の身体が、いまどんな形・姿勢で、どう動いているか」という身体の地図(ボディマップ)や、動きの予測モデルが作られています。

このボディマップについては
脳が描く身体の地図「ボディマップ」/神経学的整体で痛みを整える理由』で詳しく解説しています。

  • 深部感覚がはっきり入るほど、この地図やモデルは「くっきり」

  • 深部感覚があいまいになるほど、「ぼやけた地図」になっていく

と考えられます。

このボディマップがぼやけると、まっすぐのつもりが、実は少しねじれて立っている。
力を抜いているつもりが、常にどこかに力みが残っている。
といった「自分の感覚と、現実の姿勢・動きのズレ」が大きくなります。

3-2. 「よく分からない身体=不安・危険」と判断される仕組み

脳の一番大事な仕事は、「生命を守ること」です。

はっきり分かる身体 → ある程度予測ができるので「安全寄り」
よく分からない身体 → 何が起きるか読めないので「不安・危険寄り」
に判断しやすくなります。

その結果、よくわからない身体は防御反応として下記が出やすくなります。

  • 筋肉を固めて関節をあまり動かさないようにする(守りの姿勢・猫背など)

  • ちょっとした動きでも痛み・違和感を出してブレーキをかける

  • 「ここまでは動かさないでおこう」という可動域の制限をかける

痛みそのものはつらいです。
しかし、脳の立場からは「よく分からない身体をこれ以上危険にさらさないための非常ブレーキ」とも言えます。

3-3. 具体例:肩こり・頭痛・猫背など

例えば、デスクワークが多く、「自分ではまっすぐ座っているつもり」なのに…。
実際には常に頭が前に出ている・肩が内巻きになっているという方も多いです。

このとき、

  • 首や肩まわりの関節位置覚がぼやけていて、本当の「まっすぐ」が分からない

  • 体幹の筋感覚が鈍く、必要な力と不必要な力の区別がつきにくい

といった深部感覚のエラーが背景にあることが多いです。

脳から見ると、
「首や肩の本当の位置がよく分からない=このまま動くのは少し危ないかも
という不安・危険寄りの判断になりやすい。

その結果として肩まわりをガチガチに固める・首の筋肉を常に使い続けるという「守りのパターン」がクセになり、慢性的な肩こり・首こり・頭痛につながっていきます。

4. 根本改善には「自分で感覚を育て直す」

4-1. 施術だけでは変わりきらない理由

マッサージ・整体・ストレッチなどの施術で、下記の変化が出ることは多いです。

  • 一時的に血流が良くなる

  • 筋肉がゆるんで動きやすくなる

ただし、深部感覚があいまいなままだと、「からだの地図」は書き換わらないままです。
脳は再び同じ「守り方」を選びやすい。
そのため、痛み・こり・姿勢の崩れが戻りやすい
という流れになりがちです。

言い換えると、神経の側(感覚の側)が変わらないと、筋肉や骨格だけ整えても「根本原因」は残りやすいです。

脳や神経からの運動アプローチ全体については
運動療法で痛みを脳から改善|神経のしくみを使った新しいアプローチ
も合わせて読んでいただくと、よりイメージしやすくなります。

4-2. 深部感覚を整えていくセルフケアの方向性

深部感覚そのものを整えていくには、「感覚を細かく確認」することが大切です。

たとえば、下記を意識していきます。

  • 運動療法を何回と数だけこなすのではない

  • イメージ通り正確に動いているかを意識して動かす

  • 姿勢の崩れ、他の場所に余計な力が入らないように注意

当院の神経学的な運動・セルフケアでは、見た目には単純で簡単です。
ただ、しっかり意識して行うと難しい
この様なボディマップ(脳内の身体地図)をクリアにするための簡単な運動を通じて、
「よく分からない身体」から「ちゃんと分かる身体」へ少しずつアップデートしていくことを目指します。

ボディマップや危険予測から痛みを見直す考え方については
脳が描く身体の地図「ボディマップ」/神経学的整体で痛みを整える理由
脳が安心すると痛みが減る ― 神経学トレーニングとは?
も参考にして下さい。

5. まとめ|「よく分かる身体」に育て直すことが根本改善への近道

最後に、今回の内容を整理します。

  • 感覚は大きく「体性感覚・内臓感覚・特殊感覚」に分かれる

  • 慢性の痛み・こり・姿勢不良と特に関わるのが、体性感覚の中の深部感覚

  • 深部感覚のうち、位置覚・運動覚・筋感覚が重要

  • 「よく分からない身体=不安・危険」となり、痛み等の防御反応が出やすい

  • 施術だけでは「身体の地図」が書き換わりきらず、同じパターンに戻りやすい

  • 根本改善には深部感覚を育て直し、「ちゃんと分かる身体」にするアプローチが重要

もし今、
・同じところが何度も痛くなる
・姿勢を意識してもすぐ戻ってしまう
・検査では異常がないのに不調だけが残っている
という状態であれば、「筋肉」だけでなく感覚のエラーという視点からからだを見直してみる価値があります。

大阪府高槻市の「ぎの整体院」では、

  • 深部感覚・ボディマップの乱れ

  • 脳の危険予測の強さ

  • 前庭機能や目の動きなど、神経学的な要素

を一緒に確認しながら、整体(外からのサポート)+セルフケア(自分で感覚を育てる)の両面から、痛みの根本改善を目指していきます。

神経学トレーニング全体の考え方は
脳が安心すると痛みが減る ― 神経学トレーニングとは?』、

小脳や危険予測から運動を見直す視点は
小脳から考える運動療法|痛み・しびれを「危険予測」とボディマップから改善

もあわせてチェックしてみてください。

「その場しのぎではなく、自分の身体をちゃんと理解して整えていきたい」という方は、ひとつの参考にしていただければ嬉しいです。

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